高校生の矯正治療について

高校生の矯正治療医ではマウスピース型矯正装置も有効です。

高校生の矯正治療について

今月の話題は高校生の矯正治療です。

高校生の時期になると概ね上下顎とも第2大臼歯まで萌出しています。

噛む力もしっかり確立してきているため咬頭勘合が緊密になっており、第2大臼歯の萌出力により小学生時代よりも叢生も上顎

前突症もその程度を強めています。

下顎前突症も思春期成長により程度が進んでいることが考えられ、叢生、上顎前突症などの臼歯の前後的位置の不正咬合では中学生時代に比べると大臼歯の遠心移動が実現しづらくなっています。

固定式の遠心移動装置だけではなく、矯正用アンカースクリューによる補助装置も利用して遠心移動を行うほうが成功率は上がります。

マウスピース型矯正装置で2~3㎜の遠心移動を行う方法もあり、遠心移動の必要な量が少ない場合はマウスピース型矯正装置でよいでしょう。

嚙み合わせについて

かみ合わせはマウスピースをはめていたほうが上下の歯がお互いがお互いを止めてしまうことがなく、移動の実現性は高くなります。

上顎前突症、叢生のときに臼歯の遠心移動によってスペースを獲得し、正常咬合へ改善しようとした場合、第2大臼歯の咬頭勘合がしっかり噛み合っている場合やかみしめなどの癖があると大臼歯の遠心移動の成功の確率は低くなります。

小学生時代に比べて年齢が上がるにつれて遠心移動の成功率は下がり、同じ装置を使って大臼歯の遠心移動を行っても結果として十分なスペースが獲得できない場合が増えてきます。

そのためスペースの獲得のために永久歯の抜歯を選択する場合が増えます。

大臼歯の遠心移動は、骨の固さや後方の骨の状態、必要なスペース量の違いによりますが、場合によっては必要十分なスペースを獲得ができないことも出てきます。IPRを行って必要なスペースを獲得することも選択されるでしょう。

スペースの獲得ができないときは永久歯の抜歯により、スぺースを得ることも必要になります。

矯正治療での抜歯について

抜歯矯正治療においては、原則上下左右の歯の数をそろえる必要があるため合計4本の小臼歯の抜歯が行われます。

通常矯正治療では上顎の第1大臼歯のかみ合わせにおいて、噛み合ったときに上顎の第1大臼歯は下顎の第1大臼歯より一山後方に位置することが必要です。

矯正治療でのかみ合わせでは1歯対2歯のかみ合わせが基準になりますが、補綴治療のかみ合わせの目標は少しずらした位置なので、1歯対1歯です。(咬頭対窩)

矯正治療の1歯対2歯の噛み合わせを基準に考えた場合、上顎の前歯の大きさと下顎の前歯の大きさの差により、上顎の歯のほうが幅広であることにより、大臼歯部では上顎の歯が下顎の歯より後方にあっても前歯部においてはちょうど噛み合う位置にかみ合わせが収まります。

叢生や上顎前突症の人では大臼歯のかみ合わせが本来の位置関係ではなく上顎の大臼歯より下顎の大臼歯の方が一山後ろに噛み合っている場合があります。この場合はやはり4本の歯を抜いて矯正治療を行うこともありますが、あえて上顎2本のみの抜歯にして、大臼歯のかみ合わせに関しては一山ずらして、噛み合わせを完成させることもあります。

下顎のほうが歯の数が多くなってしまいますが、多い分だけ大臼歯のかみ合わせをずらしているため前後的位置は前歯部でちょうど合うようになります。下顎前突症の場合は思春期成長がほとんど終了してから矯正治療を開始する方が安全でしょう。