噛み合わせが悪いと体はゆがむ?

噛み合わせと身体のこと

基本的には、現代において人が歩かなくなったことで身体がきちんとした形態を維持できなくなっていることと、悪い生活習慣がはびこっていること、食事のときの悪い習慣が不正咬合の最大の原因です。ワイルドな生活をしている人に不正咬合は非常にまれです。多少傾いても歩くことで自己整復機能が働き、身体の左右、前後のバランスが再び取れるようになります。そして咀しゃくの数です。良い姿勢でたくさん噛むことが大事です。矯正治療で作られる歯並びはその人の治療中の身体のありように大きく左右されます。常習的にとっている姿勢のときに噛める歯並びへ噛み合わせと歯並びは変化します。いつも右にテレビがあってそちらを見ながら食事をしていれば、右に向いているときに良く噛める歯並びになります。身体が疲れてきたり、具合が悪くなってくると噛み合わせも変化していくのですが、矯正で良い歯並びが固まっていると、良い歯並びが噛み合わせの変化を止めようとします。姿勢と歯並びは相互に関係し合っていますので、どちらかが悪ければ片方の足を引っ張り、また良いほうは悪いほうがさらに悪くなるのを止めようとします。

小児の場合に特に変化を受けやすいのは永久歯の萌出期、交換期です。ぐたぐたした生活をしていると、体にかかる重力が背骨にまっすぐかからないため、身体は歪んできます。当然頭はバランスをとるためにずれてきます。すると上顎に対する下顎の位置もずれてきて、今までと違った噛み合わせになっていきます。皆さんも疲れてくると、カチカチ噛んだときの音が元気なときよりも鈍くなっているのがわかります。歯と歯がきちんと噛み合うと、音はよりシャープな音になります。よくない姿勢での生活が習慣になってしまうと、長い間には噛み合わせがその場所に変わってしまいます。同時に顎関節の形も変わってしまい、また、歯並びも変わってしまいます。身体の状態が一定でない人の場合はその揺れている範囲での当りになります。一点に収束しないため当たる音は鈍い音しかしません。シャープな当たり方が本来の当たり方です。この歯の当たり方の変化は歯列の変化につながり、歯列は必ず悪い方向へ変化します。残念ながら良い方向へは行きません。良い方向へ変えられるのは矯正治療のみです。

矯正の治療中にきちんとした顎の使い方をしているかどうか(これはきちんとした身体の使い方をしているかどうかということとまったく同じです。)で、出来上がる歯並びと噛み合わせも決まってしまいます。せっかく治療をされるのですから、できるだけ噛める歯並びになるために、また健康を維持しやすい歯並びになってほしいと思います。そして矯正治療が、その唯一のチャンスです。針金で歯のあたり具合などの細かい角度の調整を行うのですが、一人一人顎の動かし方は違いますので動かす角度にあわせて、歯の山の角度を調整します。ただ、この歯の山の角度はその人の健康状態により異なります。歯列形態も矯正の治療中にきちんとした顎の使い方をしているかどうか(これはきちんした身体の使い方をしているかどうかということとまったく同じです。)で、出来上がる歯並びと噛み合わせも決まってしまいます。せっかく治療をされるのですから、できるだけ噛める歯並びになるために、また健康を維持しやすい歯並びになってほしいと思います。そして矯正治療が、その唯一のチャンスです。針金で歯のあたり具合などの細かい角度の調整を行うのですが、一人一人顎の動かし方は違いますので動かす角度にあわせて、歯の山の角度を調整します。ただ、この歯の山の角度はその人の健康状態により異なります。歯列形態も違います。身体に癖のある人に理想的な歯並びを作り上げても噛めません。矯正歯科医はできる範囲で理想的な噛み合わせに近づけるのですが、もっと大事なことは治療を受ける側が、今まで述べてきたことのような悪い歯並びを作る原因をしないということです。

例えば矯正治療を受けながらあまりにハードなスポーツトレーニングを一生懸命に行うことはあまり望ましくありません。なぜならそのハードなスポーツをしているときにあわせて歯並びが形成され、ハードなスポーツをしているときに噛みやすい歯並びになるからです。スポ-ツにおいては、ほとんどの場合特定の筋肉の機能を最大限に引き出して使おうとしますので一生懸命にやる人ほど身体の重心は、ずれてきます。スポーツ選手がマウスピースをはめて記録を塗り替えるのは歯の接触を絶つことで身体のずれをさらにずらすことができるため、記録を更新することができるのです。ですから矯正治療中に一日中激しいスポーツを行い、身体がずれたままでいると噛み合わせもずれた身体にあわせて出来上がります。トレーニングを止めて身体が元に戻ったときに噛み合わせと身体とのギャップが生じてしまいます。スポーツの後はウォーキングを行い、身体のずれを直してください。ちなみに、いわゆるスポーツはそれ自体においては人体に対して害です。(姿勢、重心など又は活性酸素の問題)現在、科学者においてこれは常識です。激しく仕事をしてきた人が、定年退職して、やることが無くぶらぶらしていると急に老けて来たり、体調を壊したりするのも共通することがあるように思います。

矯正治療をするということはコンピューターでリセットボタンを押すことと似ています。それまでの悪い習慣で出来上がってしまった歯列をリセットして、作り直すからです。リセットするときに良い姿勢とよく噛む習慣を持てばすばらしい歯並びになります。多分その人の寿命も延びるでしょう。それくらい影響は大きいのです。このすばらしい治療で得られる結果を十二分に引き出して享受してほしいのです。針金で歯を連ねればきれいに整列します。ただし、きれいに整列した歯並びが頭の骨に対してどのような角度で落ち着いてくるかは(わかりやすく言えば上下の歯列で噛んだ紙が、口の中の歯槽骨というゆれている大海原で、どのような角度に収束していくか)それは矯正医がコントロールできることではないのです。頭が重力に対してどのような角度にあるか、習慣的にどのような位置にあるか、左右のバランスはどうであるのかでおのずと決まってしまうことです。だからこそよい習慣をつければ今まで以上の生命の力を発揮できる結果が得られるのです。

今の矯正歯科は人々にわかりやすく、理解しやすいということで、矯正歯科の審美性ばかりを強調していますが、私はもっとたくさん大事なことを治療で得られるのだということを知ってほしいと思っています。噛み合わせは身体にとって、ひとつの生命器官としての重要な役割があります。

皮肉なことに顎関節症の方々の歯並びは、見た目が非常にきれいな歯並びの人がけっこう多いのです。それはもちろん矯正治療をした歯並びではありません。最近の隙間のない乳歯の歯並びに共通するものを持っています。意外と知られていないことですが、顎関節症の人は歯並びを非常に気にして、この歯並びさえ治せば顎関節症が治ると考えることが多いようです。しかし、残念ながらそうではありません。歯並びが悪くても顎関節症の人は非常に少数です。逆に歯並びがきれいであるのに顎関節症の症状を持っている人はたくさんいます。歯科治療を全く受けたことのない人まで顎関節症を持っていることもしばしばです。矯正治療を行って、たまたま治ってしまった人もいますが、すべての人が治るわけではありません。(矯正の歯医者さんによっては矯正歯科治療のみで治せると言う方がおられるようですが私にはわかりません。)さまざまな原因があって発症する顎関節症は通り一遍の治療方法ではなおせません。

以前私の患者さんで、ある日急に顎がカクカクし始めたとしてお母さんが学校を休ませて子供を連れてきたことがありました。聞けばまず、内科のお医者さんに連れて行ったのだけれど、お医者さんはこれは歯科の分野だから歯科に行きなさいといわれたそうです。かかりつけの歯科に行くと、これは矯正をしているからだといわれました。(残念ながら悪いことが起こるとすべてそれは矯正歯科のせいなのです。)問診しますと、顎がカクカクしだした日の朝、首を寝違えてしまったということでした。(これは結構多いパターンです)首の触診で明らかに頚椎の変化がありました。新鮮例であったためその場で頚椎の整復を行い、即時にカクカクは治りました。寝違えただけでも顎関節症は、発症します。ある日来院してきたときにいつもより顎が開かない人がたまにいます。噛み合わせがずれている人がいます。何かありましたか?すぐに聞きますと、転んだ、足をくじいた、遊園地に行った、草むしりをした、などの返答がきます。顎の変化に本人の自覚がないことも多くあります。今まではきちんと噛んでいたのが開咬になっていたこともありました。継続して診ているからこそわかるものですが、このような変化をいち早く見つけて対処するのも矯正歯科には必要なことです。

悪くなる変化ももちろん起こるのですが、良くなる変化も起こります。なかなか良くなってくれない噛み合せの人が、ある日いきなり治ることがあります。恋人ができた、成績が良くなったなどの返事が来ます。楽器をやめた、クラブ活動を引退したなどの返事もあります。噛み合わせは身体に引きずられる、意識に引きずられるということを、つくづく感じます。口だけを診ていたのでは矯正治療は100%の成功を引き出せません。全身状態の改善を図ることが大切です。そのためいわゆる生活指導が必要になります。東洋医学を駆使する必要もあります。整復も行う必要もあります。いわゆる西洋医学以外の手法を使うことも必要でしょう。(皮肉なことに西洋医学の発生地である欧米では、現在使われている救急医療以外の医療の半分以上は、日本でいうところの現代医学以外の療法です。日本だけが医療の現場では世界に取り残されてしまっています。有能な人たちがお医者さんになっているのに残念です。)そしてそれ以上に本人の理解と努力が必要です。さまざまな臨床経験から顎関節症には、歯並びはほとんど関係ないように思います。(もちろんゼロではありません。特に低い噛み合わせを人工的に作ってしまったときはそのときは気がつかないため、治すチャンスを逸してしまうことがあります。陳旧化すると治るにも時間がかかります。)幸いなことに通常は時間が経つとだんだん収まってくるのがこの顎関節症の特徴です。これも歯並びが関係しているという説を否定する理由です。時々相談を受けますが、残念ながら私は顎関節症の治療は行っていません。

単にきれいなだけの歯並びは健康を約束するものではありません。矯正治療を受けられるならば、可能であれば、噛み合わせと全身との関連について認識をもった歯科医に治療を頼むことが良いでしょう。治療方針は歯科医師の間でかなりの差があります。治療方針の違いは患者さんの寿命を変えるほど影響があります。(これは大げさな表現ではありません。)一生の間お世話になる歯並びです。先生とよくお話されて、慎重に決めることが必要でしょう。