歯を抜かない矯正治療の方法には3つの方法があります。 ①歯列の幅を拡げる。②歯列の後方の空間を利用する。 ③個々の歯の幅を細くし、歯列全体の大きさを減少する(inter proximal reduction)、です。

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  • 歯を抜かない矯正治療の方法には3つの方法があります。 ①歯列の幅を拡げる。②歯列の後方の空間を利用する。 ③個々の歯の幅を細くし、歯列全体の大きさを減少する(inter proximal reduction)、です。

今月の話題は歯を抜かない矯正治療の方法です。文明の発達とともに顎の発育が未発育のまま止まってしまう人が増え、生えそろうだけの隙間が不足し、その結果不正咬合が増えています。多くは咀嚼の不足によるものと言われています。
あごの大きさが小さいままであればすべての歯が、整列することは無理であり、歯科矯正治療にて歯列を整えるにはあごの骨の大きさにあったサイズの歯列を目標に治療しないといけません。多くは歯数の調整により、問題の解消を図ります。上下左右の歯の数のバランスをとるため原則合計4本の小臼歯を抜歯し、トータルの歯列の大きさを減少させます。
抜かない矯正治療をすることは、あふれたすべての歯を減らすことなくどのように歯列に組み込むかということです。

大きく分けて3つの方法がとられています。
①歯列の幅を拡げる。
②歯列の後方の空間を利用する。
③個々の歯の幅を細くし、歯列全体の大きさを減少する(inter proximal reduction)。

①の方法は行える年齢が限られており、また拡大の量は個人個人の基底の骨の大きさと増加できた骨の量によります。近年はアンカースクリューを使い、成人でも基底骨の増加にアプローチすることができるようになりました。単にうつぶせ寝などの体癖により、歯列がゆがんで狭窄しているのであれば体癖を無くしたうえで、本来の幅に拡大することで隙間は増えます。基底骨以上の拡大は咬合を不安定化します。歯の移動は平行に移動せず、傾斜による移動に留まります。咀嚼能率を著しく減少させます。拡げた歯列は支えがなくなるとともに縮小に転じます。

②個々の歯は後方から前方へ移動する性質があり、叢生が発生すると卵の殻が破れるように折り重なって歯が移動してきます。逆方向には移動しないため、年齢とともに叢生、前突は重症になります。後方は当然空間が残り、歯の生えていない空き地になります。従来生理的な移動と逆行する後方への歯の移動は、不可能と思われてきましたが、アメリカの矯正歯科医DRセトリンは後方に戻すことで叢生は解消することができることを提唱しました。その弟子DRグリンフィールドは実際にこの理論を行使し、多くの当時の矯正歯科医の目を見張る結果を出しました。現代はアンカースクリューなどの、より有効な方法も加わり、後方に空間さえあれば多くの人で、叢生や上顎前突が歯を抜かずに治療出来るようになりました。

③エナメル質の範囲内で、歯の幅を削合することで、個々の歯の幅を小さくします。6前歯を片側それぞれ0.4mmずつ削合すると計算上は4.8mmの隙間を獲得することができます。オーストラリア原住民アボリジニの歯の側面の摩耗による歯列の縮小変化を研究して得られた方法です。削合した部分からの虫歯の発生はほとんどないことが知られています。現代矯正歯科医学は様々な方法を総合的に用いて歯を抜かずに歯列矯正が進められるようになりました。