小学生の矯正治療について
小学生の矯正治療(第1段階の矯正歯科治療)の特徴は矯正治療の基準が上顎であることです。下顎を上顎に合わせる治療が可能です。これはこの時期にしかできない治療です。
今月の話題は小学生の矯正治療です。
小学生と大人の矯正治療の違い
1.顎骨の成長の有無
小学生の矯正治療は大人の矯正治療とは違います。最も大きな違いは顎骨の成長があることです。自然な上顎骨の成長は9歳から10歳くらいで、大人の9割近くまで完成しています。下顎骨については身長の変化と同じで、そのあとです。個人差はありますが、男子で思春期成長のピークは13歳程度、女子で11歳程度が増加のピークとなり、その後は徐々に成長は小さくなり、収束していくことになります。
上顎骨の成長と下顎骨の成長には時間差があり、上顎骨は下顎骨より先に脳の成長と共に引きずられて大きくなります。その後下顎骨の成長が始まり、上顎骨に追いついて下顎骨(アゴ)のしっかりした大人の顔になります。下顎骨の成長がしっかり発現されるとバランスの取れた顔貌と歯並びを形成することが容易になります。
2.上顎骨に対する下顎骨の位置
第二の違いは上顎骨に対する下顎骨の位置が定まっていないことです。下あごを両手で抱える癖がつくと、下顎骨は上顎骨に対して後方へ押し込まれ、結果的に下顎骨後退による上顎前突(出っ歯)になります。下唇を巻き込む癖がついてしまうと上顎前歯と下顎前歯の間にくさびを入れることになり、上顎前歯は突き上げられて正中離開を起こしながら上前方へ移動し、下顎前歯は後方へ押されるため叢生を作りながら下顎骨が後退します。結果として上顎前突ができてしまいます。後天的要因によって不正咬合を作ってしまうことになります。
この性質を利用してこの時期に、かみ合わせの位置を変えることができます。上顎骨の位置に下顎骨の位置を合わせることができます。小学校低中学年では矯正治療の基準は上顎に置き、上顎に合わせて下顎のかみ合わせを直します。
年齢が上がるとこの治療はできなくなり、下顎骨の位置に上顎を合わせる治療に代わります。基準は下顎の位置に変わります。顔貌の発達は下顎骨の発育が十分に引き出された場合に最もよいバランスを得ることができます。
もちろん下顎骨の過成長がおこるとバランスは崩れます。小学生のうちに、後天的要因による下顎骨の劣成長の流れを予防し十分な成長を引き出すことで将来のバランスの良い顔貌と歯並びを期待することができます。
小学生の矯正治療は「あごの矯正」
小学生の矯正治療は通常第1段階の矯正治療といわれています。これは歯の矯正ではなくあごの矯正です。成長するとこの内容の治療はできなくなります。あごの成長の誘導ができなくなったところで、歯の矯正治療=第2段階の治療が始まります。
第1段階で十分な発育が引き出せた場合はそこそこの歯並びになっています。第2段階が必要ない場合も往々にして見られます。第2段階の治療は、20代30代になってから開始することも可能です。第1段階の治療は小学生でしかすることができず、とても大事な、一生を左右する治療です。