年と共に咬み合わせは、変わっていきます。窮屈な咬合になり、肩こり、頭痛、首やあごの痛みをひきこします。中高年の方ほど実は矯正治療が必要です。

  • ホーム
  • 歯並びの雑学
  • 年と共に咬み合わせは、変わっていきます。窮屈な咬合になり、肩こり、頭痛、首やあごの痛みをひきこします。中高年の方ほど実は矯正治療が必要です。

今月の話題は下顎の機能運動です。

下顎の機能運動はグラインディングタイプ(臼磨運動が主)とチョッピングタイプ(杵の運動が主)に分かれます。グラインディングタイプは開口時にいったん非作業側(食物をつぶす側でない方)に向かいますが、チョッピングタイプは作業側(食物をつぶす側)のみでサイクル運動をします。
グラインディングタイプの中でもチューイングサイクルがさらに多くの水平成分を持つタイプでは前頭面(正面から見る面)で逆三角形型の軌跡になります。日本人の多くは斜め卵型です。斜め卵型は非作業側よりに開口し、作業側に入ってうしろ側方からICP(咬頭嵌合位)に入ります。逆三角形型の場合は草食動物と同じく下顎はほとんど横に動き、すり切ります。逆三角形型の咬み方は咬耗しやすく、非作業側で横に開口するため上顎の歯が側方へ傾斜させられます。
グラインディングタイプのチューイングの時は経年的な咬耗によりガイドの不足や欠如がおこります。斜め卵型のチューイングの時はA斜面(下顎臼歯の一番外側の咬頭の外側斜面とその面にあたる上顎の咬頭の斜面)は水平に、C斜面(下顎臼歯の内側の咬頭の外向きの斜面とその面にあたる上顎の咬頭の斜面)は斜めに咬耗します。年と共に上下の歯は互いにはまり込み、窮屈な咬合となり、クレンチングを招き咬合性外傷を起こしやすくなります。
逆三角形型の場合は逆側方湾曲のついた咬耗になります。
チョッピングタイプの場合はサイクルの幅が狭いため、歯牙の咬耗はあまりありません。

開口において、非作業側は側方にゆっくりと開口します。作業側においては、下顎は非作業側後下方へ開きますが、垂直成分が大きく、スピーディに開口します。閉口路では非作業側では垂直成分がやや多めになり、作業側に遅れてICPに入っていきます。作業側においては、作業側後方から頬側咬頭が上顎のA斜面を目指し、擦切りながらICPに入ります。続いてB斜面で圧断しC斜面で剪断します。作業側がやや側方から勘合し、遅れて非作業側がやや垂直に勘合します。左右の時間差はA斜面とC斜面との角度の差によります。非作業側、作業側が同時にICPに入るのではありません。下顎の臼歯ではA斜面の角度に比べてC斜面の角度が大きく、急に立ち上がるような咬耗になることが多いのですが、左右の時間差がこの角度の差を生んでいます。

グラインディングタイプの人では、はまり込みのある咬合形態になりやすく、窮屈な咬合になり、肩こり、頭痛、首やあごの痛みをひきこします。悪い態癖があるとさらに強く変化します。歯列を拡大して、舌側傾斜している歯を起こし、上顎の中心裂溝にはまり込んでいる下顎の咬頭をおこしあげ、A斜面に三角形の遊びを作り、食物の流れる溝を作ることで、改善へ向かいます。週一回の歯列の拡大が待ち遠しいほど改善する場合もあります。変化は経年的に進行するものなので、中高年の方ほど実は矯正治療が必要です。