遠心移動装置(カリエール)は大臼歯の遠心移動の新しい方法です。犬歯から後方の歯が、一塊として後方へ移動するため、移動後の治療期間の短縮が可能になります。

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今月の話題は遠心移動装置カリエールモーションです。

遠心移動装置カリエールモーションはスペインの矯正歯科医ルイス・カリエールが開発した犬歯から第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯までの4本を一塊として後方へ移動する方法です。上顎の犬歯から第一大臼歯にブリッジを装着し、下顎の歯列全体をアンカーとして矯正用ゴムを上顎犬歯から下顎第一大臼歯にかけ、上顎の4本を一塊として後方へ引きます。

ゴムの力は片側8オンスかけます。かなり大きな力になるため下顎のアンカーは歯列全体を覆うマウスピースを使います。マウスピースがないままにゴムをかけると下顎第一大臼歯のみが前方へ傾斜移動してしまいます。マウスピースを併用することで副作用を打ち消します。ほんの少しのゴムの劣化も避けるため、一日に2回、多い時は3回新しいゴムに取り換えます。一日22時間以上の装着が必要です。

上顎第一大臼歯に装着したブリッジの後方部分にはボールジョイントが組み込まれており、第一大臼歯の主に後方回転、さらに後方への多少の傾斜を可能にする仕組みになっています。このことにより、第一大臼歯の近心回転が是正され、大臼歯の噛み合わせがよい噛み合わせに自動的に改善するように設計されています。通常上顎の第一大臼歯は生理的には後方から前方へ移動し、また口蓋根を軸として前方へ近心回転移動します。この経年的な移動を元に戻すことにより、本来あったであろう位置に上顎第一大臼歯を戻し、適正な大臼歯関係を回復することができます。

大臼歯の位置が適正になると、それより前方にあった歯が後方へ戻れる空隙が生まれ、前歯部の咬合関係にも改善の余地が生まれます。従来第一大臼歯の後方移動は非常に難しい治療で、方法も限られたものでしたが、さらにもう一つ可能性のある方法が追加されたことになります。さらに大臼歯のみならず、犬歯から後方の歯が、一塊として後方へ移動するため、移動後の治療期間の短縮が可能になりました。従来の第一大臼歯、第二大臼歯の後方移動では大臼歯の移動後の、残った第二小臼歯までの10本の歯の移動にかなり神経を使う移動様式を必要としましたが、犬歯までの移動が終わっているため、割合と単純な動きですみます。

マウスピース型矯正装置による矯正においても遠心移動装置カリエールモーションとの併用は治療内容の可能性を広げ、さらにマウスピースの枚数の減少と治療期間の短縮が可能となります。ゴムさえ確実に付けていると高い確率で大臼歯の整直と位置の是正が実現します。歯科矯正用アンカースクリューと併用することも可能です。