咬合平面と噛みあわせ
今月の話題は咬合平面と噛みあわせです。矯正歯科ではいろいろなレントゲンを撮りますが、撮ったレントゲンで噛みあわせの機能分析も行います。主に横顔のレントゲンを用います。基準線はいろいろありますが、アキシスオルビダ平面(下顎の回転軸中心と眼窩の最深部をつなげた線)を用います。咬合平面(Gnathological Occlusal Plane下顎前歯切縁と第一大臼歯咬頭頂をつないだ平面)は小さい頃はアキシスオルビダ平面に対して急峻な角度を持っています。後方歯が萌出するに従い下顎骨は歯列の変化に合わせて前下方へ適応移動し、咬合平面の角度は平坦化していきます。最終的には下顎下縁平面(いわゆるアゴのライン)とアキシスオルビダ平面の真ん中に収まります。上顎前突の人はアキシスオルビダ平面に対して咬合平面は急峻になりやすく、下顎前突の人は平坦になりやすい傾向があります。咬合平面は2面性を持つこともあり、前方域と後方域に分けて診断します。重要なのは機能に深く関係する後方域の平面角です。上顎前歯切縁と上顎第2小臼歯咬頭頂を結んだ平面と、上顎第2小臼歯咬頭頂と上顎第二大臼歯または第一大臼歯咬頭頂を結んだ平面です。通常は後方の角度の方が急峻になります。この差が大きい場合は臼歯部の咬頭干渉を疑い、下顎位の近遠心的(前後的)咬合関係の評価を行います。顎関節に対する機能分析も重要です。頭蓋骨にある下顎骨頭が滑る斜面の角度(水平顆路角:Sagital Condylar Inclination)と咬合平面との角度を評価します(相対顆路角:Relative Condylar Inclination)。相対顆路角が小さいと臼歯は離開しにくく、顎が動くときに(滑走時)臼歯部に干渉を生じやすくなります。歯の咬頭傾斜角も考慮に入れます。水平顆路角から咬合平面傾斜角と臼歯咬頭傾斜角をひくことで、臼歯離開角が導かれます。正常な臼歯離開角は8~13°です。8°以下では干渉の危険性が高くなり、13°以上では臼歯の離開量が増えて咀嚼効率の低下をまねきます(噛みにくくなる)。義歯やかぶせる治療にも応用します。咬合平面が急峻になると相対前方誘導路角(前歯の内側の角度)と相対顆路角は咬頭傾斜角に近づいてくるため臼歯の離開が少なくなります。咬合平面が平坦化すると臼歯離開が大きくなりすぎて咀嚼効率が低下します。歯列の幅が小さくなると、頬側臼歯展開角が小さくなり(抱え込むような形、いわゆる窮屈な噛みあわせ)、咬頭干渉が増大します。抜歯して矯正したときは、いかにこの相対前方誘導路角と頬側臼歯展開角を小さくしないかが焦点となります。