歯列の幅

今月の話題は歯列の幅です。歯型を見ると、右と左の歯列の幅が違っていることがよくあります。以前お話した態癖により、右側、または左側、あるいは両側とも歯が内側に倒れていることが多いのです。両側とも倒れているときも、左右で程度が違うことがほとんどです。山下矯正歯科では基本的に拡大治療を行って、内側に押されて倒れている歯を、本来の角度にまで起こし上げてから、次の治療に進みます。そのとき、歯列を単純に左右に拡大すると、その左右差をさらに大きくすることがあります。狭いほうが広くならず、広いほうがさらに広くなってしまいます。それは狭い側に、広がる力を押さえる態癖があるときです。さまざまな方法を使って、動きの悪いほうに力を集中するようにします。それでも動いてほしい側は動きが芳しくなく、動いてほしくない側が動いてしまうといったジレンマに陥ります。本人が持っている態癖をなくさないと解決しませんし、治りません。本人が気付いて態癖をやめればすぐに左右対称になります。

先日、遠方から矯正相談に来られた方がいました。矯正治療をしたのだけれど、噛む場所がわからないというご相談でした。歯並びはきれいでした。しかし、きれいに噛み合う位置と本来噛むべき位置が違っていました。お顔の形も非対称でした。アゴも動かすとカクカク鳴ります。原因は矯正治療中にひどい態癖を続けていたためでした。態癖のために上下のアゴが一体となってずれ、ずれたアゴにきれいな歯並びが出来上がったのでした。上顎下顎の真ん中もあっています。でも噛めません。アゴを横にずらすと楽だと本人も感じていました。ずらした位置が、その方の正しいアゴの位置でした。正しいアゴの位置で、噛み合う歯並びであるべきでしょう。足をくじいただけでもかみ合わせは変わります。しかし、態癖はアゴをその何倍も大きく変形させ、移動させるため、影響が大きいのです。矯正治療中に態癖をやめていれば、このようなことにはならなかったでしょう。お顔には手、ひじ、枕など、少しの間も触らないように気をつけましょう。