噛み合わせと体調
今月の話題は噛み合わせと体調です。4月の初診の方の中に、矯正治療で体調を壊したという相談で、遠方から来院された方(Aさん)がいました。
その方の矯正治療前と治療後のお顔の写真を比べたところ、治療後のお顔は長さが短くなり、鼻下から顎先(オトガイ)の距離が非常に短くなっていました。
上の前歯を極端に大きく引き込んでおり、下顎の位置は上の前歯の移動とともに後ろの方へ移動していました。体調不良、体調好調にはパターンがあり、その方の前の状態からの変化を見ると体調の変化もおおよそ推理できます。
体のどの辺に不調、好調が起こるかも推理できます。学術的には噛み合わせと体調の関連性は証明されていません。
矯正治療と体調不良、体調好調の関連性も証明されていません。しかし、山下矯正歯科では矯正治療が進むにつれて体調がよくなったというお話はごく普通にあり、お母様方と私の間でよく交わされる話題です。私の矯正治療のモットーは“元気になる矯正治療”です。
下顎は後退すればするほど身体への負担を増やします。下顎にわずかでも力の入っている方は、筋肉の走行方向の関係で、下顎をどうしても後方へ移動させてしまいます。下顎は身体の重心を取っていますので、噛み締めている癖のある人はその顎の機能を止めてしまっていることにもなります。
Aさんは無意識に噛みこんでいる癖があり、私がそのことを指摘しても理解できないようでした。噛み合わせを、Aさんの適正と思われる位置(リラックスポジション)にして、腕の力を試すと、本人もびっくりするくらい力が入りました。このようなことも学術的には証明されていません。
しかし、現実にはよくあることで、研究が臨床に追いついていない分野です。このように日常生活で無意識に行っていることで、思わぬ変化を招くことがあります。
Aさんは矯正治療を行いながら、極端な態癖を続けたため、下顎の位置が変化し、体調不良が起こったのでしょう。いろいろなことが重なり合って、通常は起こらないでいることが起こってしまうことがあり、やっていいこと、悪いことを知っている、いないは大きな違いとなります。