反対咬合の治療方法

今月の話題は反対咬合の治療方法です。小児期の治療で一度反対咬合が治っても、遺伝的な問題を強く持っていると、成長とともに下顎の過成長がおこり、反対咬合が再発することがあります。仮性の反対咬合でも放置すると真性のものになってしまいますので、小児期の治療はとても大事です。おおむね反対咬合の治療では、下顎の成長が一段落する時期まで待ってから、針金の矯正に入ります。7歳から15歳の成長分析の結果、その方の成長が終了した時点で反対咬合にまたなるかどうかは、成長期のうちからは予測できないことが判明しました。

小児期の反対咬合の治り方で、再発後の治療の難易度が変わります。小児期の反対咬合の治り方は2パターンに分かれます。①下顎前歯が内側へ傾斜し上顎前歯が前方へ傾斜し、互いに歯の傾きが変わって治るパターン。(前歯の角度が変わって治る)②下顎の歯並び全体が後方へ動き、上顎の歯並び全体が前方へ移動して噛み合わせが治るパターン。通常の反対咬合の治療方法で前歯の噛みあわせが治るときには、上下前歯の“角度”が変化して治るパターンの貢献度が大です。上顎の前方移動と下顎の後方移動により治る貢献度は小です。その後の下顎骨の成長で(レイトグロス)反対咬合が再発すると、上顎前歯はすでに程度の差こそあれ、前方へ傾斜しており、下顎前歯は内側へ傾斜しているので、歯を傾斜させる治療方法には限度があります。限られた範囲で前歯を傾斜させて対応するか、角度で治すにはあまりに上顎下顎の差が大きい場合は手術に頼ることになります。

②のパターンで大部分が治る方法として、イタリアのナポリ大学で研究開発されたSECⅢという方法があります。これはS:スプリント、E:エラスティック(ゴム)C:チンキャップを使った治療方法です。骨格性の要素が強いと思われる反対咬合の人を、小児期にSECⅢで治療し、25年後の状態を調べたところ、52人中46名が正常咬合を維持していました。再発していたのは6名でした。再発しても、今度は角度で治す方法が使えます。山下矯正歯科では、難易度の高い骨格性(真性)の反対咬合の人にはSECⅢを提案しています。