頭蓋の位置変化による噛み合わせの変化について

頭蓋の位置変化による噛み合わせの変化について

今回の話題は頭蓋の位置変化による噛み合わせの変化です。

通常噛み合わせが変わったと表現した時は上あごは正常で、正しい上あごの歯列に対して下あごの噛み合わせの位置が変わったことを言います。

噛んだ時にうまく噛めない時、通常は下の歯(アゴ)の位置変化が原因と考えます。
しかし、実際は上あごの位置が変わったことによる噛み合わせの変化(違い)が起こることのほうが多いのです。

体幹に対して頭蓋は高位にありさらに質量があるため、体幹の姿勢の変化が起こると頭蓋はバランスをとるため頸椎に対して前後左右に位置を変えます。傾きも変わります。

頭部を垂直に保とうと三半規管により水平垂直を感知し体の位置変化に対応しようとします。
下あごの位置は基本的には筋肉と顎関節により保たれますが、頭蓋の位置変化に対しては変化が少し遅れます。
それは安静位空隙といわれる上下顎歯列間の空隙があるためです。

TCH(tooth contacting habit)がないのが本来の姿ですので、下顎骨は上顎歯列の変化にはそのまま追随せず、体幹あるいは舌骨からの筋群により、下顎は元の位置にとどまろうとしますが、上顎骨から下顎骨へついている筋群により新しい位置に下顎骨は引かれ、移動しようとします。

そのため上顎骨の位置変化に100%追随せず多少遅れた位置に下顎骨は位置することになり、その結果、以前噛んでいた位置と違う位置で噛んでしまい、違和感を感じることになります。

姿勢の変化と噛み合わせの関係性について

体調によってもその人の姿勢は変わり、脊柱の状態が変化し、それに伴い頭蓋の位置が変わります。
体の不調があると、ヒトは体を丸め防護の姿勢となります。
前後の位置関係の変化として、体と頭蓋の位置が変わり、多くは頭蓋が前方へ移動し、相対的に下顎骨が後方へ移動したようになります。

頬杖、うつぶせ寝、横寝等によっても姿勢は変化します。
姿勢の変化が緩徐なものであれば本人は気づかない程度の噛み合わせの変化です。

体調の変化が回復し、そのまま気づかないままに頭蓋下顎骨の位置関係は元に戻ります。
これは歯の問題ではなく生活上の問題によるものです。

噛み合わせのずれが長期に渡るとどうなる?

噛み合わせのずれが長期に渡ると物理的な歯の接触の変化が大きくなり、歯列の乱れ、詰め物の脱落、う蝕の原因、新たな歯周病の惹起となります。多くは呼吸のし辛さを伴います。

姿勢の変化の原因としては肉体的事故、精神的事故、病気、生活習慣、態癖、ストレス、妊娠出産、転居、生活の変化、趣味、結婚、親しい人との死別、訴訟などがあります。

発育期からこの変異があると歯列の発達に左右差が生じます。
上下顎骨の成長の左右差、どちらに八重歯ができたかなどで生活習慣が読み取れることがあります。

下顎位が左にあると左の胸鎖乳突筋が収縮し、左の鎖骨が挙上できません。
左の片側性吸気抑制が発生します。
心臓疾患、肝臓疾患、下痢、便秘等も歯列、姿勢により読み取れることがあります。