骨性癒着歯はけん引してみないと確定診断はつきません
今月の話題は骨性癒着による歯の萌出障害です。
歯の骨性癒着は乳歯、永久歯ともに発生し、乳歯の場合は後続永久歯の萌出障害を引き起こします。骨性癒着した残存乳歯は、しばしば咬合平面より低位にあり、生理的動揺度が少なく、一見してそれと推測が可能です。通常は抜歯することにより、後継永久歯の萌出を促すことで、以後は良い経過をとることが多い。永久歯に骨性癒着が発生した場合、当該永久歯の萌出が障害され、以後の萌出が停止することになります。
骨性癒着の診断は、
① 生理的動揺が認められない。
② エックス線写真上で歯根膜腔が欠如している。
③ 打診によって高い特徴的な音がする、ことで推測します。
しかし、エックス線写真所見や打診音からの情報では骨性癒着を確実に判断することは難しく、実際に歯を動かしてみて、動かないことを確認する以外確定診断はほとんど不可能であると云われています。
萌出障害には3タイプあり、
① 骨内において萌出を妨げるものがある場合。
② 正常な位置で萌出したが、歯肉内で萌出が止まったもの。
③ ほぼ正常な位置で萌出し歯冠の一部が露出したところで止まったもの、です。
正常に萌出し、咬合平面に達しているが、その後は経年的歯の移動がなく、停止している場合もあり、この場合は事前に予測がつかず、矯正治療を行って初めて歯の移動ができないことがわかり、癒着が判明します。
骨性癒着の原因は、
① 遺伝、あるいは先天的な歯根膜の発育障害
② セメント質過形成
③ 外傷などによる局所の障害
④ 歯根膜に広範な壊死が起こった場合
⑤ ウイルス感染(ムンプスウイルス、ヘルペスウイルス)、その他原因不明なこともあります。
骨性癒着歯への処置は、
① 限局的骨切り術;歯槽骨ごと歯を移動させ、固定する。
② 再植術;癒着部位を分離するため一度意図的に脱臼させ、抜髄、癒着面の滑沢化等を行ったうえで、希望する位置へ移動し固定する。
④ けん引;癒着部位を分離するため意図的に亜脱臼させ、その直後にけん引移動する。
⑤ 抜歯。
⑥ 歯冠切断し、補綴治療を行う、があります。
再植術については置換性外部吸収(歯根歯質が骨と癒着し、徐々に骨に置換されるタイプの外部吸収が起こること)を生じることもあります。亜脱臼による処置成功率は70%とされていますが、2回亜脱臼を行っても動かない場合は抜歯すべきというレポートがあります。置換性吸収が進行している場合、吸収の程度によっては脱臼時に歯根の破折が起きることがあります。置換性吸収のおきた根面の滑沢化を行い再植し、長期に使用できたというレポートもあります。