不耕起栽培について
不耕起栽培は地球規模の持続可能農業へのアプローチの一つ
今月の話題は不耕起栽培です。
不耕起栽培は土地を耕さない農法です。
耕起栽培では耕すことにより強制的に酸素が地中に供給され有機物の分解が急速に進みます。
こうして得られた栄養素を作物が吸収して育ちます。
人類が耕す前に比べて土壌中の有機物(炭素)の含有量は25%減少したとみられています。
土壌は年々劣化しており、土壌中に固定されていた炭素が大気に放出されています。
このまま耕起栽培が放置されると地球上の主な農地の大半が土地劣化に陥り、人類の生存が脅かされることが現実味を帯びているといわれています。
耕起栽培により表面数10cmの有用な微生物の豊富な土壌が風や雨で流されてしまい、一度失われた表面土壌の再生は極めて困難です。
世界中で農地として使えなくなってしまった荒れ地が急激に増えています。
このようなリサーチを発端に、現在土地を耕さない不耕起栽培がアメリカを中心に広がってきています。
不耕起栽培の長所
不耕起栽培の長所は
①土壌侵食(風食、水食)を少なくできる。表土の構造が崩れず耕作の作物残渣が残るので、風や雨での土壌流亡がされにくくなる。
②耕起、整地等の作業の省略により、労働時間、燃料費、機械費用が削減できる。
③地力の向上により天候に左右されない適期播種ができる。
④土壌水分の浸潤性や保水性に優れる。土中に根穴構造が残り、排水性や保水性が良くなり、干ばつにも長雨にも強くなる。
⑤土壌表面の植物残渣被覆により鳥害や雑草除去に有効であり、地温上昇抑制効果もある。土壌生物の多様性が増え、害虫や病原体の極端な増加を防ぐことができる。
⑥土壌有機物の分解抑制と植物残渣が鋤き込まれないため表層に有機物が集積する。
⑦水田ではわらが酸化的に分解する。
⑧田植え前の落水による土壌流出がない。
⑨代掻きの省略により酸化的土壌環境が維持される(根の活性が増す)。
⑨重い重機が畑に入らないので、深い場所の土壌が圧縮されない。
⑩未耕起の土を根が破り、稲に生じる植物ホルモン的な作用が、活力高い太い根を作り茎を太くする。
不耕起栽培の短所
短所としては
①土壌硬度の増大、地温低下により適応可能な土壌や気候条件に制限がある。
②速効性肥料の全面施肥では肥効の低下、条施肥では肥料焼けの恐れがある。播種と施肥の同時施行が難しい。
③雑草防除効果の不安定性、用水量の増加による施肥量の増加により農薬や肥料の施用量が増加する。
④排水性の低い土地では表層の湿害が発生することがある。
⑤根菜類の栽培が困難。
⑥表層施肥では土壌表層が酸性化しやすい。
⑦水田では作物収量の不安定性がある。
肥効調節型肥料の開発により、施肥位置の制限、表層酸性化、収量不安定性が軽減されるようになってきています。
アメリカでは小麦、大豆、トウモロコシなどの不耕起の率は60%以上になりました。世界での不耕起の率は2004年での調査ではまだ7%です。