日本発祥の凍結解凍覚醒法について
凍結解凍覚醒法で将来の食糧不足が解消できる希望がある
今月の話題は凍結解凍覚醒法です。
岡山県の田中節三氏の開発した方法です。
熱帯や亜熱帯に植生する植物もかつては氷河期を経験し、現在の温帯地域と同じ気候の下で生息していたであろうということから、耐寒性を備えた遺伝子が残っていると考え、氷河期の気候をもう一度環境負荷として与えることで、植物が持っている劣悪な環境下でも生育する力を再発現させます。
植物の遺伝子はその97%が眠っていると考えられています。
処理後の植物は細胞分裂が加速し、成長速度が早まり、結実に必要な日照や積算気温が少なくて済み、結果的に耐寒性があがるという現象が発生しています。
成長速度が速まることは雑草が成長する前に生育するため、除草剤の使用が必要なくなります。
無農薬栽培が可能になった
また、病虫害耐性も高まり無農薬栽培が可能になりました。処理して成長したバナナは糖度が非常に高く(糖度25度、通常は15度程度)香りも高く、口当たりも良くなりました。
結実も早く9か月目で収穫可能となり、倍の速さで結実します。
収量も通常1株1房であるのに平均5房の収量になりました。
零下の環境でも育ち、現在釧路でも栽培されています。凍結解凍覚醒法で特性が増強された植物についてdenovoRNA-seqにより遺伝子の発現解析を行うと、数千の遺伝子の発現量に変化があることがわかりました。
植物ホルモンなど成長にかかわる遺伝子の発現上昇や塩、高温、低温、乾燥など各種環境ストレス応答にかかわる遺伝子の発現上昇が観察されています。
増強された特性は成長や株わけでも失われません。
これには細胞が遺伝子の発現をコントロールするエピジェネティックな変化が関与していると考えられています。
凍結解凍覚醒法では凍結時最低温度は-60度、温度低下の早さは0.1度/日以下です。
凍結の期間は180日以上かけます。数年に及ぶ品種改良や遺伝子組み換え法に頼ることなく、特性が増強された植物を得ることができます。
世界の食糧問題への寄与が期待されている
現在ではいったん凍結解凍覚醒法で増強された特性を有する植物組織を用いた抽出液を作成し、抽出液に浸すことによりコストをかけずに時間的にも早く大量の別の植物に対して優れた特性を付与することができることがわかりました。
凍結覚醒解凍法による植物の増強特性をよりコストを低く、かかる時間も少なく、広範囲に応用することができます。
熱帯作物だけでなく、稲、小麦、大麦、大豆、トウモロコシなど穀物類にも応用が可能と見込まれており、世界の食糧問題への寄与が期待されています。