イベルメクチンについて
イベルメクチンについて
今月の話題はイベルメクチンです。
イベルメクチンは、2015年ノーベル生理学医学賞を受賞した北里大学大村智教授が発見した放線菌が産生する物質エバメクチンをアメリカ製薬会社メルクが改良を施し作成した経口駆虫剤です。
イベルメクチンは無脊椎動物の神経、筋細胞に存在するグルタミン酸作動性塩素イオンチャンネルに特異的かつ高い親和性を持ち、結合し、塩素イオンに対する細胞膜の透過性を上昇させます。
そのため塩素イオンが細胞内に流入することにより、神経細胞や筋細胞の過分極が生じ寄生虫が麻痺を起こし死滅します。
ヒトよりも先に動物への投与が行われ、絶大な効果を発揮しました。
イベルメクチンの有効性
ウシ、羊の捻転胃虫、毛様胃虫、イヌ、ウマの糞線虫の駆虫に有効です。
ウシ用イベルメクチンは牛肉内に成分が残留するため許容量が決められています。
血中半減期は長く、(47時間)脂肪細胞と肝臓細胞に局在します。
ヒト用として疥癬、腸管糞線虫、オンコセルカ症、リンパ系フィラリア症(象皮症)の薬として使われています。
とくにオンコセルカ症は河川に生息するブヨからミクロフィラリア(回旋糸状虫)が移され、これが体内繁殖して失明する人が多数出ていました。
この薬によって患者は激減し、コロンビア、メキシコではオンコセルカ症は撲滅したと宣言を出しています。
血中イベルメクチンはアルブミンと結合しており、水に溶けにくく、尿中に排出されません。
脂溶性が高いと予想されていますが、中枢神経系の抑制を示すことはほとんどありません。
副反応について
ヒトに対する致命的な副反応が少ないことも高く評価されています。
イベルメクチンは複数のウィルス(エイズウィルス、デング熱ウィルス)に抗ウィルス作用(ウィルス増殖抑制効果)が認められることから、日本、オーストラリア、アメリカ、イギリス、フランスなどでCOVID-19に有効であるとして治験が行われています。
イベルメクチンはタンパク輸送機能を持つインポーチンタンパク質を阻害することにより、ウィルスの核内への侵入が阻害されるとされています。
またウィルスのメインプロテアーゼを阻害することで、ウィルスの増殖が抑制されると考えられています。
実験では新型コロナ感染者重症、中症者のイベルメクチン投与群での死亡率は2.1%であり、イベルメクチン非投与群では死亡率9.5%でした。
死亡率は有意に低下したとされています。
ブラジル、スロバキア、チェコ、ペルーでは新型コロナ治療薬として承認されています。WHO,FDA,アメリカ感染症学会ではまだ承認には至っていません。日本では適応外薬剤として認められています。
特許がすでに切れている薬剤であり、製薬会社が投資してもうまみがないことが新型コロナへの適応を妨げていると指摘されています。