バイオフィルムの除去
今月の話題は、来院のたびに行っている、回転器具によるバイオフィルムの除去です。以前は、フッ素を塗り、ハブラシ練習を行い、あとは、各自で磨いていただき、汚れの落ちない方はお母さんに磨いてもらっていました。(今でも基本は同じです。)中学生以上で磨き残しの多い方は、1~2週間ごとに歯ブラシの練習のためだけに来院してもらったりしていました。それでも虫歯は発生し、歯周病は進行しました。予防を、完全に行えるとは歯科医側も思っていませんでした。
その後、バイオフィルムの性質がわかり始め、回転器具でしか除去できないバイオフィルムの除去を、定期的に行うことが、とても効果があることがわかりました。バイオフィルムは歯科大学の学生でさえ、歯垢染色剤で染色されなくなるまで除去しきるには、4時間もかかります。さらに再石灰化を促進するさまざまな薬剤が商品化し、白濁や、虫歯の原因となる歯のごく小さな傷も再石灰化(修復)が可能となりました。口の中の細菌の種類や量の検査もできるようになりました。
今では1~4ヶ月毎に歯科医院に通院して、口腔内のメンテナンス、クリーニング(デブライトメントまたはPMTCなど)を行うことが、歯のもちを良くし、体の健康の維持、自己免疫力の増強、寝たきり老人を作らない、国の医療費の削減につながることが世界的に知られています。歯科の先進国であるスウェーデンでは国の政策で、歯科の予防が国費で行われ、大きな成果を挙げています。日本では、バイオフィルムの除去などの定期的な予防処置は自費になります。
矯正治療中は1ヶ月に一度、そのような意味での清掃が行われるため、普通に歯ブラシをしていればよい状態を保てますが、矯正が終了して通院がとびとびのメンテナンスに入り、クリーニングの回数が少なくなると、とたんに新たな虫歯を作ってしまう方がいます。気をつけましょう。