アスピリン
今月の話題はアスピリンです。ヒポクラテスのころから柳の葉に鎮痛効果があることが知られていました。柳からアスピリンは分離され、解熱鎮痛剤として用いられてきました。近年、実はそれ以外のさまざまな効果があることがわかりました。それはEPA、DHAのように血液をさらさらにして、心臓発作や、脳卒中の予防(2000年)ができることや、肺ガン、大腸ガンの予防です。
発熱、炎症のときは、脂肪からプロスタグラジンH2が作り出されます。プロスタグラジンH2から、プロスタサイクリン(血液凝固阻止作用)トロンボキサンA2(血小板凝集作用)プロスタグラジンE2(発熱、炎症作用)が作られます。アスピリンはこの大元のプロスタグラジンH2が産生されることを阻害し、その先でできるプロスタグラジンE2を作らせないようにして発熱、炎症を止めます。
ここで面白いのはアスピリンを大目に飲むと熱を下げ、痛みをとる効果(特にリウマチに効果)があるのですが、少量飲むと、熱は下がらないけれども血液凝固を防ぐ効果があることがわかりました。少量服用の場合のみトロンボキサンA2産生を阻害するのです。熱さましには1錠丸々飲む必要があるのですが、血液凝固予防にはその3分の1を飲むことが有効であることがわかりました。血が固まりづらくなるため、脳卒中と心臓発作を47%減少させることがわかりました。飲む量によって発現効果が違うのです。これをアスピリンジレンマといいます。アメリカのお医者の多くが毎日少量のアスピリンを飲んでいるそうです。
ごく最近ではアスピリンの少量投与は肺ガンを43%減少させ、大腸ガンを40%減らす効果があることが報告されています。アスピリンには胃障害(胃酸分泌制御、胃粘膜保護低下)の副作用があります。バファリンはアスピリンを制酸剤ダイアルミネートで包んだものです。小児のインフルエンザや水疱瘡ではライ症候群(高熱と吐き気、痙攣などの症状)が発生することがあり、この場合の投与は禁忌です。