金属アレルギー

今月の話題は金属アレルギーです。汗などでイオン化された金属が、タンパク質と結合し、表皮のランゲルハンス細胞がこれと複合体を作り、抗原特異的T細胞が作られます。(感作)再びイオン化した金属が体内に入ると抗原抗体反応を起こし、アレルゲンをつけた表皮細胞を殺すためサイトカインが放出され、細胞を液化し、その部が小水泡になり、痒くなり、掻くことで、破れ、アレルゲンともども体外に排出します。こうして体からアレルゲンを排出するのですが、同時にサイトカインによってびらんなど皮膚炎が発生します。原因としては洗剤や化粧品、ネックレス、時計の革バンド(クロムのなめし)、ボタンなど多くの日用品が原因になります。チョコレートアレルギーや、カカオアレルギーが重なることもあります。

歯科の詰め物による金属アレルギーでは、パッチテスト、蛍光X線分析装置による金属の分析など慎重な検査を行った後、当該金属の除去が行われます。金属を除去することで治癒する率は治療後2年の判定で50%から60%です。歯科金属でアレルギーを起こすものは水銀、ニッケル、クロム、コバルト、パラジウム、金、白金、錫、亜鉛、銅、アンチモン、チタンなど多岐に渡ります。

歯科金属アレルギーで有名なのは掌蹠膿疱症です。手掌足底に小水泡を多発します。鱗屑(りんせつ)が固く、痂皮が付着します。通常はステロイド剤で治療します。難治性のものは口蓋扁桃の細菌感染が原因していることも多く、口蓋扁桃の切除で、80%が治癒ないし改善します。C型肝炎がアジュバンド(アレルギーを助長する物質)となっていることもあります。扁平苔癬、汎発性湿疹、舌炎、歯肉炎、口唇炎、口内炎も歯科金属が関与していることがあります。

水銀系の消毒剤であるマーキュロクロム(赤チン)やアマルガムは現在ほとんど使われていないので、水銀の金属アレルギーは感作の機会が少なく、以前と比べて減っています。