低髄液圧症候群

今月の話題は低髄液圧症候群です。脳の周りを埋める液が髄液ですが、この髄液の圧力が何らかの原因で低下してしまう(髄液が漏れてしまう)と様々な症状が起きます。代表的な症状として、①頸部の痛み②全身の倦怠感③起立性の頭痛④背部の痛み⑤頭重感⑥集中力の低下⑦視力障害⑧めまい⑨吐き気⑩聴力の障害⑪物忘れ⑫顎関節症などがあります。

健康な成人の場合、髄液は150~200mlで、1日に約500ml生産されています。髄液は側脳室、第3脳室、第4脳室の脈絡叢で作られ、脳、脊髄を循環し、クモ膜顆粒から排出されます。脳は髄液に浮かんでいるのが正常です。髄液に浮かんでいる脳は神経血管で頭蓋骨につながっています。髄液が漏れて過剰に減少すると、寝ているときは良いのですが、立ち上がった時に脳が浮いていられず沈んでしまい、神経血管が引っ張られ、強い頭痛や吐き気、さまざまな症状を発生します。

髄液の検査で髄液を採取すると、一時的に髄液圧が低下し、これが原因で、頭痛などの症状が起きます。穿刺の針穴は自然にふさがり、症状も消えます。これが従来の知見でした。最近の研究では、特発性低髄液圧症候群として、日常の中での事故や外傷が原因で髄液が漏れている場合があることがわかりました。①交通事故(むちうち)②スポーツ③出産が主な原因でした。統計的には15%ほどが原因不明でした。

診断は過去の経緯、脳MRI、RI脳槽・脊髄液腔シンチグラフィなどにより診断します。治療は本人の静脈血を脊髄硬膜外に注入するブラッドパッチ法(脊髄硬膜外自家血注入療法)が効果的です。

低髄液圧症候群の方では顎関節症を起こして治療中の人も多くいます。低髄液圧症候群の治療後、自然に顎関節症も治ってしまうことも多く、髄液の減少が三叉神経の障害を起こし、咬筋のアンバランスが顎関節症を起こしていたものと考えられます。