再びセロトニンについて

再びセロトニンについて

セロトニン分泌の少ないサルは群れの中で地位が低く、興奮しやすく、攻撃的になることも多い。
歩行、咀嚼がセロトニンを活性化します。

今回の話題は再びセロトニンです。

セロトニンの役割とは

セロトニンは心の神経物質といわれ脳の発育に重要な役割をはたしています。

ラットで、発育期にセロトニンの作用を妨げるとその後のラットの運動細胞に異常が生じます。
またラットの出生前、脳内中にはセロトニン細胞の軸索が張り巡らされています。
セロトニン細胞の軸索は神経回路網を構成する下地作りを行っているといわれています。

感情抑制に働くセロトニンの作用

そして重要なセロトニンの作用は感情抑制です。

セロトニンを増やす薬を投与されたサルは仲間との密接な交流が盛んとなり、その集団での社会的地位が高まることがわかりました。
社会的に地位の高いサルは自信に満ちてゆったりしていますが、地位の低いサルは興奮しやすく、攻撃的になることも多いのです。

集団内の社会的地位の高低には肉体的特徴、体格が大きい、歯が大きい等の特徴は必要ありません。
ラットにおいてもセロトニンの働きが少ないと攻撃性が高まり、セロトニン系の働きが高いと攻撃性が弱まることが知られています。

脳内のセロトニンの大部分は脳幹部の縫線核にあります。セロトニン神経細胞の軸索は脳内各所、脊髄にまで伸びており脳脊髄内に広くその作用を及ぼしています。
ヒトの大脳皮質と大脳基底核との間には神経回路網が張り巡らされており、外側眼窩前頭皮質サーキットという神経回路としてセロトニン神経回路からの信号が直接大脳皮質に入っていることがわかりました。

この外側眼窩前頭皮質サーキットは対人関係、共感性、社会性にかかわります。

うつ病を改善する治療薬

うつ病の治療薬はセロトニンを含むモノアミン系神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン、ヒスタミン等)の働きを強める薬剤です。

モノアミン酸化酵素阻害剤によりモノアミン神経伝達物質の分解が抑えられ、モノアミン系神経伝達物質が体内で利用されやすくすることがうつ病を改善します。セロトニンの少ない状況が衝動性や攻撃性、共感性や社会性の欠如、気分の滅入りに関与するとされています。

以前お伝えした選択的セロトニン吸収阻害剤が有効とされています。

セロトニンにはパニックを起こすノルアドレナリン神経系を抑制する働きもあります。
セロトニン神経系の特徴は4つです。

①覚醒時に盛んに活動し、ノンレム睡眠時に活動を低下させ、レム睡眠時に活動を停止します。

②覚醒したのち朝の光によりセロトニンの活動はさらに活発になります。

③リズミカルな筋肉運動、手を振った歩行、咀嚼、深呼吸により、活動レベルはさらに高まります。

④セロトニン神経細胞体表面には受容体があり、この受容体が刺激されると活動が抑制されます。

朝の光を浴びなかったり、歩行、咀嚼をおろそかにすると活動は低下します。
夜更かしで朝が起きられない、噛まない、歩かないは心の健康に大きく影響することがわかっています。