乳糖不耐症について
乳糖不耐症について
今回の話題は乳糖不耐症です。
世界で乳食文化圏として知られている地域は寒冷と乾燥の地域です。
寒冷な地域で乳食を行っているのはヨーロッパとモンゴルであり、乾燥地域としては中東や砂漠の地域です。牛乳、馬乳、ヤク乳、ヤギ乳、羊乳、ラクダ乳が食されています。
ヒトの食用作物の育成が困難な土地で命ながら得るにはそのような地域でも生きていける動物から
乳を得、食物とする必要があったためと考えられています。
日本人は乳糖不耐症人種
日本には7世紀に蘇や酪として伝わっていますが、自然の恵みの豊かな日本では必要のないものであるがゆえ、牛、馬、等の家畜がいるにもかかわらず、その後の乳の食品としての定着はなく消えています。
明治維新以後、地域としての歴史的考慮無しに、乳食が西洋の文化、ヨーロッパの文化であるということで牛乳の摂取を、カルシウム等の栄養摂取に有利であるとの理由をもって推奨され取り入れられました。
(現代では牛乳がカルシウム摂取について有効であるということは否定されています)
1963年ダルクヴィストのヒトの乳糖分解酵素欠如のリサーチが発端となり、多くの研究がなされ、
日本人の乳糖不耐症人種としての特徴が明らかになりました。
牛乳推奨の立場の側からはネガティブな情報でした。
乳糖不耐症はヨーロッパ人や砂漠の人々には少ない
離乳期を過ぎると乳糖分解酵素が分泌されなくなることは哺乳類に共通のものです。
成長しても乳糖分解酵素を分泌しているのはヨーロッパ人や砂漠の周辺の人々のみであることがわかっています。
乳糖分解酵素は2糖類であるラクトースを単糖類であるグルコースとガラクトースに分解する酵素です。
乳糖分解酵素は乳児にのみ必要な消化酵素であり、離乳期を過ぎるとその分泌は止まります。
離乳期以後は乳糖を含まない食品をとるため、乳糖分解酵素は必要の無い酵素であるためです。
乳糖分解酵素を分泌しない大多数のヒトにとっては乳類は消化のできない食品です。
反対にでんぷんを分解するアミラーゼは乳児期にはほんのわずかしか分泌されません。
母乳にはアミラーゼによる消化が必要なでんぷんは含まれていないためアミラーゼは必要ないためです。
離乳期を境に哺乳類は食性を大きく変えます。乳児は100%動物性食性(母乳)であり、
離乳期を過ぎると植物性の食品が導入されます。
分泌される消化酵素は年齢により、食性の変化とともに変わります。
液状の食品から固形の食品に変わることに対しては、歯が生えることで対応しています。
アミラーゼについては唾液以外に膵液でも分泌されており、ヒトがデンプンをいかに完全に消化しようとしているかがわかります。
もちろん肉食動物ではアミラーゼは分泌されず、牛馬でもかなり低いレベルの分泌にとどまります。