体内の鉄について
今月の話題は体内の鉄です。
マタニティブルーは鉄不足が一因?
マタニティブルー(妊娠中、出産後情緒不安定になる)は鉄不足が一因と考えられています。
体内の鉄は全体の60~70%が血液のヘモグロビンの成分として、20~30%は肝臓、脾臓、骨髄などに貯蔵鉄として蓄えられています。
血液中の鉄が不足すると酸素が十分運べなくなり、様々なトラブルが発生します。
そのため血液中の鉄が不足すると、体内の貯蔵鉄から不足分が補われます。貯蔵鉄が枯渇すると貧血になります。
潜在性鉄欠乏の症状
潜在性鉄欠乏のときは以下のような症状が現れます。
①朝がなかなか起きられない
②食欲がない
③集中が持続しない
④冷えが治らない
⑤全身に倦惰感がある
⑥肩こりがつらい
⑦午後になると眠くなる
⑧休日はごろごろしていることが多い
⑨頭が重い
⑩骨・皮膚・粘膜の障害(あざ、コラーゲン低下による骨・肌の異常、爪・毛髪・舌の異常)
⑪知能情動への影響(不眠集中力低下、学習障害、うつ、パニック)
⑫ホルモンへの影響(甲状腺ホルモン成熟障害、不妊症)
⑬白血球免疫への影響(抵抗力の減少)
⑭消化系に及ぼす影響(嚥下障害・食欲不振・下痢・便秘、氷を好んで食べる)
⑮不定愁訴(頭痛、イライラ、耳鳴り、肩こり、寝坊癖、疲労、むずむず脚)等です。
鉄は酸素を運搬する以外にブドウ糖からエナルギーを取り出すときに必要であり、酵素の作用を助け活性酸素の害を防ぐ働きをします。
フェリチン値について
潜在的鉄不足は血中のフェリチン値からわかります。鉄の必要量は1日当たり男性10㎎、女性12㎎、妊婦と授乳中の女性は20㎎です。
鉄補給は動物性食品ではレバーや肉、魚介類、牛や豚の赤み肉。植物性の鉄は小松菜、スイートコーン、ほうれん草、枝豆、空豆、ひじき、そば、豆乳に多く含まれます。
フェリチンは鉄結合性たんぱくの一つです。ほぼすべての生物がフェリチンを合成します。
フェリチンは24個のタンパク質からなる球状たんぱく質複合体で、鉄を内部に取り込む籠の形態をしています。
遊離の鉄イオンは活性酸素を生成するため、鉄を無害な状態で貯蔵するためこのような構造で貯蔵します。フェリチン濃度は感染や悪性腫瘍によって上昇します。
フェリチン濃度が少なくなるのは鉄欠乏性貧血、甲状腺機能低下症やビタミンC欠乏症(壊血病)、むずむず脚症候群の場合にも起こります。
血清フェリチンの低下で早期小児う蝕症が高い傾向があることも知られています。血中ヘモグロビン濃度が低い場合も同様の傾向がみられます。
まとめ
鉄欠乏で情緒不安定になるのは、やる気を高めるノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン等脳内神経伝達物質がタンパク質を原料として作られる際に鉄が必要だからです。
出産後情緒不安定になるのも鉄不足が一因と考えられています。妊婦の鉄不足は早産や低出生体重児の原因となります。