演繹法と帰納法について
今月の話題は演繹法と帰納法です。
演繹法とは
演繹法は一般的な法則から特定の結論を導く方法です。
既存の法則や原則を基にした推理を行います。
よく知られた演繹法に三段論法があります。
①すべての人間は死ぬ。
②ソクラテスは人間である。
③ゆえにソクラテスも死ぬ。
A=BかつB=CであればA=Cである。という流れになります。
演繹法では基本となる前提が誤るとすべての結論が誤ることになります。
①すべての鳥類は空を飛ぶ。
②ダチョウは鳥類である。
③ゆえにダチョウは空を飛ぶ。
実際にはダチョウは飛びません。ビジネスにおいても、企業の成長戦略が市場のニーズと合っていないときは、部門別の戦略も誤った方向へ進んでしまいます。
誰もが納得できる自明の前提からスタートし、その結果をもとに結論を導き出していくことから、複雑なテーマにおいても結論づけることができる利点があります。
演繹論的志向について
演繹論的志向では、複数の事象を関連づけて結論を出すと良いといわれています。
大前提→小前提→結論の順に展開します。
考え方としては
①最初に結論を決める。結論に向かってレールを引く。
②普遍的な事象を考える。
③前提の前提を考える。
これは結論に対して肉付けできるものを設定します。
例えば、アメリカ人の友人には家に上がるときには靴を脱いでもらいたい。→アメリカ人の友人が家に遊びにくる。→日本では家に上がるときに靴を脱ぐ。
例2:広告費用の30%をSNS広告にかけると売り上げが20%増加する。(大前提)
今回の売り上げ目標は20%増にする。(小前提)
よってSNS広告費を広告費の30%まで引き上げよう。(結論)
一般的な原則から具体的な結論を導くもので、企業の方針やビジョンから具体的な戦略を展開する際に役立ちます。
抽象的な原則から具体的な結論を導く際には、正確な中間の推論が必要になります。
帰納法とは
帰納法は事例から一般的な法則や原則を導き出す方法です。経験や観察に基づくデータの分析を行い、複数ある事象から結論を導く思考法です。
大量のデータから傾向やパターンを理解し、推論を導きますが、結論は絶対的な真実とは限りません。
あくまで前提を踏まえて論理的に正しい推論を行うことが必要であり、事例や状況証拠そのものに間違いがあるときや、共通点を探し出す際や共通点から結論を導く道筋に論理の飛躍があると、帰納法そのものが成り立たなくなります。
例えば、
(前提)この犬には二つの耳がある。あの犬にも二つの耳がある。その犬にも耳が二つある。ゆえにすべての犬には二つの耳がある。
これは良いが、
(前提)この犬の耳はたれている。あの犬の耳もたれている。その犬の耳もたれている。ゆえにすべての犬の耳はたれている。
これは論理の飛躍があります。
帰納法では複数の事象の共通点から結論付けます。企業はデータ分析や市場調査から帰納法を用いて戦略を構築します。
製品開発、人材育成など幅広く用いられています。このときデータが偏っていると一般化した法則が誤る可能性があり注意が必要です。
例えば、顧客アンケートが特定層からのものだけである場合、市場全体のニーズ判断に誤りを生じることになります。
まとめ
演繹法と帰納法はお互いに補完しあうことが多く、効果的な戦略構築には両者のバランスが求められます。手法の理解と適切な活用が不可欠です。