シナプスコネクタ―について

シナプスコネクターの研究は認知症などの脳疾患の改善に寄与するでしょう。

シナプスコネクターについて

今月の話題はシナプスコネクタ―です。

脳のシナプスが切れてしまうことで、様々な疾患が発生します。

アルツハイマー病、脊髄損傷などがその例です。

シナプスとは神経細胞間のつなぎ目のことです。

神経細胞はシナプスという結び目でお互いにつながり、神経回路を形作っています。

シナプスの役割

ヒトの脳には1000億~2000億の神経細胞があり、数百兆個のシナプスによって繋がっており、視覚情報、聴覚情報、運動機能等をお互いに伝え合い、考えたり体を動かしています。

神経細胞からは軸索という枝が伸びており軸索が他の神経細胞の受容体に接している部分がシナプスです。

シナプスからはドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質が放出され、次の神経へ命令が伝達されます。

伝達物質を受け取った受容体は電気的に興奮し、次の神経細胞へ伝達物質を放出します。

アルツハイマー病、脊髄損傷などの場合、シナプスが減少したり、寸断されて神経伝達が妨げられています。

シナプスコネクターの役割

シナプスコネクターはシナプスを再形成させて神経伝達を回復させます。

シナプスコネクターの一つであるセレベリンは主に小脳でシナプス前部と後部をつなぐ作用を持ちます。

セレベリンはシナプス前部にあるニューレキシンとシナプス後部にあるデルタ型グルタミン酸受容体の結合を仲立ちします。

ニューレキシンは多くのシナプス前部に存在しますが、デルタ型グルタミン受容体は小脳などのシナプス後部にのみ存在します。

また別のシナプスオーガナイザー(シナプスコネクターと違ってシナプス前部後部の橋渡しの機能はない)である神経ペントラキシンはAMPA型グルタミン酸受容体と相互作用します。

AMPA型グルタミン酸はほぼすべての興奮性シナプス後部に存在します。

セレブリンと神経ペントラキシンは棒状の領域と球状の領域とに分けられ、セレブリンの棒状の領域はニューレキシンと結合し、神経ペントラキシンの球状領域はAMPA型グルタミン酸と結合することができます。

セレブリンの棒状領域と神経ペントラキシンの球状領域を組み合わせた分子を開発し、CPTXと名づけられました。

CPTXを小脳失調、アルツハイマー病、脊髄損傷のマウスに投与したところ、小脳失調でバランスの取れた歩行ができなかったマウスは数日でバランスの取れた歩行ができるようになりました。

アルツハイマー病モデルのマウスも数日で迷路学習や、記憶想起で健康なマウスと同程度まで回復しました。

腰椎を損傷したマウスも運動機能の回復が数日で観測されました。将来ヒトの精神、神経疾患の治療にCPTXが応用され、革新的進歩につながることが期待されています。