オートファジーについて
オートファジーは細胞の自食作用のことです。
オートファジーについて
今月の話題はオートファジーです。
オートファジーとは細胞の自食作用のことを言います。
細胞はいつまでもあり続けるのではなく、一定期間後能動的に分解されます。
短寿命タンパク質の分解はプロテアゾーム系のシステムが担当し、長寿命タンパク質の分解はオートファジーが担当します。
オートファジーのしくみについて
細胞質内に隔離膜という膜区画が現れ、湾曲しながら伸長し細胞質やミトコンドリア、ペルオキシソームなどの細胞内小器官を包み込み、最終的には直径約1ミクロンの閉じた2重膜構造の球が完成します(オートファゴゾーム)。
続いてその外膜にリソゾームが融合します(オートリソゾーム)。
リソゾームには加水分解酵素が充満しており、オートリソゾーム内に流入した加水分解酵素が内膜と包み込んだ細胞質、ミトコンドリア等細胞内小器官を消化します。
オートファジーでは細胞内のある空間がごっそりリソゾーム酵素で分解されるためバルク分解系とも呼ばれます。
東京工業大学大隅教授は酵母菌のオートファジーについて研究発表を行い、2016年ノーベル賞を受賞しました。
オートファジーの役割
細胞は飢餓やストレスにさらされると自己の一部をオートファジーにより分解し、栄養源にすることでサバイバルを図ります。
卵子においても蓄えたタンパク質がオートファジーにより分解され、アミノ酸がリサイクルされて卵子の発生のためのエネルギーとなります。
ヒトは1日に自己のたんぱく質を200g分解しており、そのうちの70~80%は再びたんぱく質合成に使われます。毎日壊しては作るということを繰り返します。
これにより、細胞が弱ったり死んだりして様々な病気になること、がん、神経変性疾患、2型糖尿病、心不全、腎症、感染症、を防ぎます。
また、傷ついたミトコンドリア、変性疾患(アルツハイマー病、狂牛病など)の原因となる凝集しやすい異常タンパク質、病原体等を積極的に除去し、疾患や感染症を防ぐ役割もはたしています。
オートファジーは細胞の生存や恒常性維持に欠かせないシステムであることがわかりました。
飢餓時のオートファジーは非選択的にランダムに分解しますが、有害物の除去は選択的な分解であることが分かっています。
最近の研究では細胞外から侵入してきた細菌がエンドソーム膜を破って細胞質に入ろうとしたり、物質を送り込もうと穴をあけるとオートファゴゾームが形成されることが分かりました。
すなわち、損傷したエンドソームを標的としていることです。
加齢によりオートファジーを抑制するルビコンが減少し、オートファジーが過剰になり、脂肪細胞の機能が低下し、生活習慣病(糖尿病、脂肪肝など)痩せなどが引き起こされることも分かってきました。
脂肪細胞は糖や脂質を自ら貯め込み、ホルモンを分泌し、肝臓や筋肉での栄養取り込みを促し、血糖値や血中の中性脂肪、コレステロール値を正常に保っています。
飢餓にさらされた時は脂肪細胞の機能を積極的に下げることで、脂肪細胞に貯蓄できなくなった栄養素を他の細胞に振り向けます。老化によりこの機構が誤って働き、その結果生活習慣病を引き起こしてしまうと考えられています。