アニサキス症について
アニサキスによる中毒が温暖化とともに増えてきました。
アニサキス症について
今月の話題はアニサキス症とアニサキスアレルギーです。
アニサキス症は、魚介を食べた後数時間程度で激しい腹痛を起こす感染症です。
これは海産魚介類の寄生虫であるアニサキス(9種のうちA.simplex,とA.pegreffiiの2種が主な原因種)の幼虫が胃に入ることにより起こります。
また、アニサキスの虫体、分泌物、排泄物等によっておこるアレルギーをアニサキスアレルギーと呼びます。
アニサキスはクジラなどの海産哺乳類が終宿主です。アニサキス成虫の卵が海産哺乳類から糞とともに排泄され、その卵がオキアミなどに食べられ幼虫になり、オキアミがサバやイカ等に食べられ、サバやイカがクジラやイルカ、アザラシなどに食べられることで、終宿主にたどり着きます。
日本近海ではミンククジラが終宿主で、A.simplexではマイルカが終宿主です。
アニサキス症の予防方法
アニサキスの幼虫は63°以上の高温による調理、-20°以下の冷凍処理24時間以上で死滅します。
酢漬け、塩漬け、燻製では死にません。刺身やお寿司など海産魚介を生で食す習慣のある日本に多い感染症です。
オランダでもニシンの生食をする習慣があり、アニサキス症の発生が多かったのですが、-20°以下で24時間以上冷凍処理することが義務付けられたことで、アニサキス症の発生は見られなくなりました。
アニサキスアレルギーについて
魚への寄生状況は内臓に多く、筋肉にも寄生しますが、腹側に集中します。
外洋性の魚に寄生が多く見られますが、根付の魚には寄生は多くありません。
アニサキス症の治療は内視鏡で、アニサキスの原虫を摘出します。
アニサキスアレルギーは体内に抗原が入ることにより抗原に対するIgE抗体が産生され、IgE抗体がマスト細胞または好塩基球と結合して感作され、体内の免疫システムが抗原を敵とみなして記憶します。
敵が再び体内に侵入し、マスト細胞が暴露されると、ヒスタミン、プロスタグラジン等の化学伝達物質が放出されます。
化学伝達物質は血管透過性亢進や平滑筋収縮等を起こします。アニサキスアレルギーでは蕁麻疹、血管性浮腫、呼吸困難、おう吐、下痢、腹痛、など重症例が多く発生します。
時にはアナフィラキシーショック等が起こります。アニキサスアレルギーは生きた虫体のアニキサス症に伴って起こる場合と、死んだ虫体あるいは排泄物、分泌物により食物アレルギーとして発生する場合があります。
サバアレルギーの20%はアニサキスアレルギーであることが判明しています。
アニサキス症になったことがなくてもIgE抗体を持っていることがありますが、アレルゲンAni s 1は熱を通しても分解しません。
アレルギーはほとんどすべての海産物で起こり、かつおだし汁でも起こります。
魚粉や魚油を摂取した鶏や養殖魚にもアレルギー患者は感作し、血液検査で特異的IgE抗体の測定を行うと同定することができます。
治療は抗ヒスタミン薬、β2刺激薬の投与、副腎皮質ステロイドの投与、減感作療法等が行われます。
熊本大学の開発で、高電圧を一瞬かけることで、魚筋肉内のアニサキスを殺虫し、胃アニサキス症を予防する方法が始まっています。