エピジェネティクスについて

エピジェネティックスは進化発達のもう一つの形です。

エピジェネティクスについて

今月の話題はエピジェネティクスです。

後天的、外因的要因が、その個体の遺伝情報を変えることなく
遺伝子発現のパターンや状態、それに基ずく形態や構造、認知機能や行動などの表現形を多様に変化させる生体システムがあることがわかりました。

これをエピジェネティクスと言います。

胎児のころに低栄養な環境にさらされた経験をもつと、成人になったときに生活習慣病、糖尿病、高血圧、心筋梗塞などの冠動脈疾患や統合失調症などの精神疾患を発症するリスクが高くなるといわれています。

これは妊娠早期の時期に低栄養状態を経験したことにより、妊娠中期から後期にかけて体の大きさが正常範囲に追いついたとしても、低栄養状態であったことがあるという影響が出生後の健康状態に表れたことと考えられます。

胎児が子宮内の異常な環境に適応しながら成長すると、その適応は出生後も維持され、出生後の環境と子宮内の環境の違いにより、適応したものが今度は合わなくなるという矛盾が生じて、疾患発症の確率が大きくなるためと考えられています。

障害との関係について

出生直後の新生児の低体温、低血糖、重症黄疸、脱水、低栄養が発達障害の原因であるという説もあります。

同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でも環境経験の違いにより、エピジェネティックな変化が引き起こされ、統合失調症、うつ、自閉スペクトラム症を片方のみが発症したというリサーチもあります。

この現象は遺伝子の変化ではなく、同一個体の環境とのかかわりにより体が変化していったことを意味します。

環境による変化について

1歳のころにヒトは共同注意という指さしの動作を始めます。
これは大人に自分の関心のあるものを知らせようとする行動です。

大人の関心を自分が指差しした方向に向かわせ、大人と注意を共有しようとします。
それに対して通常チンパンジーでの指差しは単に物に触ったりするのみです。

ところがヒトに飼われて育ったチンパンジーでは、人の指差しと似た指差しを行うようになります。

これもヒトの環境による影響でチンパンジーの認知発達が影響を受けたためと考えられます。

アタッチメントについて

また養育者と子供との間に形成される特別な結びつきをアタッチメントと呼びます。

哺乳動物や鳥類では養育者と子供がくっつくことで、生育します。

子供が危険な状況になった時に、養育者の体と接触することで、生存の可能性を高めるためにくっつくという行為が行われますが、アタッチメントは子供が養育者から保護される必要がなくなった時以後も重要であるといわれています。

しっかり形成されたアタッチメントは子供が安全な場所から離れて冒険しても帰ることができるよりどころとして心に残り、強い安心感を持つことができるからです。

身体接触経験、特に情愛的接触により、乳児の学習動機は高められ、主体的な行動を引き出します。幼児期に親とのアタッチメントを無くしてしまうと思春期以後に解離性障害、多動性障害、うつ病などが現れやすくなるといわれています。