腸内細菌とセロトニンの関係
腸内細菌の状態でセロトニンの産生が悪くなるとそのひとは短気になってしまいます。腸内細菌はその人のこころの健康も左右しています。
プロバイオティクスとプレバイオティクス
今月の話題はプロバイオティクスとプレバイオティクスです。プロバイオティクズは1989年イギリスのFllerにより定義づけられました。有害な細菌を抑制する抗生物質に対して、腸内フローラのバランスを改善することにより宿主に有益に働く、生きた細菌によって構成される添加物をいいます。ザワークラフト、ケフィア、キムチ、納豆、ヨーグルトなどがあります。プレバイオティクスは1994年イギリスのGibsonとRoberfroidにより提唱されました。大腸に常在する有用菌のうち特定の細菌を増殖させるか、あるいは有害な菌の増殖を抑制することで宿主に有益な効果をもたらす難消化性食品成分のことをいいます。
腸と脳の相関関係
ネズミに乳酸菌を飲ませ、ストレスをかけるとストレスマーカーであるコルチコステロンが乳酸菌を飲ませなかったネズミに比べて上がりにくくなったこと、同じ遺伝子を待つネズミで腸内細菌を持つネズミと持たないネズミを作ると腸内細菌を持たないネズミは持つネズミと比べて落ちつきがなくなること、腸内細菌を持たないネズミは、通常は近づかない危険な場所にも行きやすい行動が観察されるなど、脳と体の両方の健康に腸内細菌は関与していることが提唱されています。人体でも腸内細菌の変化は免疫や神経系だけでなく脳にも変化をもたらす可能性があり、不安・うつ病・ストレス恐怖心などの心の変化にもつながっていることが示唆されます。腸内細菌は気分の調整の役割を担うセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質も生み出しています。腸から脳への複雑な相関が存在しています。うつ病と、加工食品の過剰摂取との関連性が観察されており、またうつ病のある人は多様性の低いマイクロバイオフォームを持っていることが分かりました。
多様な食事を意識し、コロコロも身体も健康に
適切な脳と心の健康のために、多様な食事を取ることが推奨されています。人体でも腸管内で産生されるセロトニンが不足すると、怒りやすく、時間が経過してもそれを抑えられなくなり、きれやすくなります。無菌マウスの血中セロトニン濃度は、通常環境で飼育されているマウスに比較して低濃度で、無菌マウスは落ち着きがありません。このようなマウスを普通の環境に戻したり、乳酸菌などを投与するとマウスは落ち着きを取り戻します。有用菌を増加させるために重要なものは食物繊維であり、特に水溶性の食物繊維が重要とされています。大便の80%は水分であり、残りの20%は剥がれた腸粘膜細胞、食べ物のカス、腸内フローラです。食物繊維を多く含む食材としては野菜、いも類、キノコ類、海藻類、豆類があります。人々が玄米から精白米になった過程で食物繊維は6分の1程度に減少しました。繊維性の食品を意識してとることが必要です。
プレバイオティクス郡の健康への関与
大腸では発酵が起こることが重要とされています。発酵菌が腸内フローラを有用菌に変化させると考えられています。標準的な餌のラット、プレバイオティクスを増やした餌のラットにストレスをかけると、プレバイオティクス食群ではストレス前はノンレム睡眠(深い眠り)の時間が長く、ストレスを与えた後ではストレスからの回復に不可欠なレム睡眠(浅い眠り)が長くなりました。標準食群では体温変化が不自然に平坦化し、ストレス後には腸内細菌叢の多様性が低下していました。プレバイオティクス群ではこれらの悪影響は緩和していました。腸内細菌の体の健康、心の健康への関与が非常に大きいことがわかります。
プロバイオティクスは
- 安全であること
- ヒトの腸内フローラを構成する細菌であること
- 胃液胆汁などに耐えて生きたまま腸に到達すること
- 腸で増殖できること⑤人に対して有用であること
- 食品などの形で有効な菌数を維持できること⑦取りやすく安価であること。
プレバイオティクスは①消化管上部で分解されないこと②大腸に共生するビフィズス菌などの有益な細菌の栄養源となり、菌の増殖を促進すること③腸内フローラを健康的な構成に改善できること④人の健康に対して有益に作用することが要件になります。