オステオカルシンが持つ様々な効果~肥満を抑え、体を強くする?~
骨中のオステオカルシンには肥満を抑える、記憶力、骨格筋の増大、活性酸素を消去する、肌の活性化など多くの効果があります。骨芽細胞に刺激を与えることで増大します
今月の話題はオステオカルシンです。オステオカルシンは骨芽細胞が分泌するたんぱく質の一つです。骨は常に破骨細胞により骨のアパタイトが溶かされ、骨芽細胞が新たな骨を作り埋め戻すリモデリングを繰り返しています。約5年で体中の骨が入れ替わるといわれています。
オステオカルシンは骨芽細胞から分泌され、骨基質に埋め込まれていきます(約0.4%)。わずかな量が血中に循環し、臓器を刺激します。インシュリン分泌を増加させる働きをするホルモンGLP-1を介してオステオカルシンがインシュリン分泌を促進することがわかりました。
消化管から出るホルモン(インクラチン)は現在グルコース依存性インシュリン分泌刺激ポリペプチドとGLP-1(グルカゴン様ペプチド)が知られています。いずれも食事成分が腸管粘膜に接すると粘膜細胞から血中に放出され、膵臓に達しインシュリンの分泌を促します。
オステオカルシンにはカルボキシル化されたGla型オステオカルシン(GlaOC)とカルボキシル化されていないGlu型オステオカルシン(ucOG)があります。そのうちucOGが小腸にある受容体に作用して腸管からのGLP-1の分泌を促します。経口投与された場合、胃酸によってGlaOCのカルボキシル基が外れてucOGに変わると推測されています。マウスにオステオカルシンを経口投与したところ空腹時の血糖値が低下し糖耐機能が上昇しました。
オステオカルシンを飲み続けたマウスは膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が増殖し、ランゲルハンス島自体が増大していました。インシュリンの分泌量も増えていました。高脂肪、高炭水化物のえさで飼育したメタボリックシンドロームのマウスにオステオカルシンを投与しても糖代謝が改善しました。
GLP-1の作用を阻害する薬剤を投与した後で同様の実験をメタボリックシンドロームのマウスに行うと、これらの効果はみられませんでした。オステオカルシンによる糖代謝改善効果の大部分はGLP-1を介したものであると考えられています。
血中オステオカルシン濃度が上昇するにつれ血中のGLP-1濃度も上昇することが観察されています。体内では大部分がGlaOCとして骨基質に埋もれていますが、血中のオステオカルシンは80%がGlaOC、20%がucOGで循環しています。オステオカルシンには肥満を抑える効果以外に、アンチエイジングの効果もあります。
活性酸素を消去する効果、記憶力、骨格筋の増大、生殖力の増強にも関与しています。癌細胞を減らす、免疫力の増強、コラーゲン育成を補助し肌の活性化などの効果も認められています。
オステオカルシンを増強するには骨芽細胞に刺激を与えることが必要です。骨は25歳を超えると加齢のために減少していきます。足の裏全体で着地するような約10cmのジャンプを一日30回程度するのが良いとされています。座ったままの生活で骨に対する刺激がないと骨細胞はスクレロチンを放出し骨細胞の減少が引き起こされます。