ヘビ毒はもとは消化酵素なので、噛まれると筋肉の壊死が起こり、運動障害などの後遺症が残ることもあります。
今月の話題はヘビの歯です。
ヘビ類の歯は円錐系の単純歯性で構成されています。 ボア類などでは下顎に1列、上顎に2列の歯列弓です。上顎の外側の歯列弓は上顎骨に支持され、内側の歯列弓は口蓋骨と翼状骨によって支持されています。すべての歯は口の奥に向かって傾いています。
初めは不連続性を持たない規則的な歯列でしたが、進化の過程で次第に、
ア)前から後方に行くにつれ大きさを減らす(前歯性、ボアなど)。
イ)すべての歯が同等。
ウ)前から後方へ次第に大きさが増す(後歯性、マムシ、ヤマカガシなど)、など変化していきました。
その後極端に大きな牙が現れます。牙は前歯異形歯性では上顎骨の最前部、後異形歯性では上顎骨の最後部に現れました。上顎骨は前方は前前頭骨との連接点、後方は外翼状骨との連接点で、頭蓋と連接しており、この支持点に牙は生えます。ドクヘビ類では毒牙は溝が最初は側面にありましたが、次第に正面に変わっていきます。溝のふちが近接するようになり、やがて両端を除き接着するようになります。管状になることで効率よく毒を作用させることができます。
コブラやサンゴヘビは前歯性であり、マムシ類、ガラガラヘビ類は後歯性です。牙が発達するにつれ毒牙以外の上顎骨歯は消滅していき、上顎骨も短くなりました。後歯性の系統のヘビ類は牙が後方にあるため、攻撃に不利であり、さらに後方では大きな牙は邪魔です。これを解消するため、後歯性のヘビでは口を開くと可動性のある口蓋が筋肉の作用で、前方へ引っ張り出され、外翼状骨も前方へ移動します。後ろ向きの牙のある上顎骨は前前頭骨と関節構造になっており、外翼状骨の前方移動で上顎骨は90度前方へ回転し、牙は垂直になり、かみつき易くなります。
堅固な上顎骨-前前頭骨支点を、前牙類は直接、後牙類は口蓋を移動させて支点としています。毒牙の発達と同じく筋系も変化し、唾液腺(耳下腺)が袋になり、周りに分泌細胞を配置します。筋線維が腺の後方を内包し、かみつくと急激に袋を収縮させて毒液を噴出させます。威嚇のため2m近く毒を飛ばすヘビもいます。 ヘビの毒は出血毒と神経毒に分かれます。マムシ、ヤマカガシ、などは出血毒、コブラ、ハブは神経毒です。同じ出血毒のマムシ、ヤマカガシでも、ヤマカガシは血液凝固作用(プロトロンビンの活性)であり、フィブリノーゲンが減少し、血小板は後で減少します。血栓ができ、急性腎不全を起こします。マムシの毒は血小板を減少させ、皮下出血、消化管出血、呼吸不全、心不全を起こします。ヘビ毒はもとは消化酵素なので、筋肉の壊死が起こり、運動障害などの後遺症が残ることもあります。