なんば歩きは一軸ではなく二軸で歩く歩き方です。腰に負担がかからずお年寄りにも負担の少ない歩行です。
今月の話題はなんば歩きです。
なんば歩きとは一般に同側の手足が同方向に動く歩き方とされています。間違いとは言えませんがこれが本質ではありません。或いは、腰から下のみが前進するようにし、上体はただ腰に乗っかって運搬されるような形、左右の半身を繰り返し、手を振るということではないとし、着物を着た時に腰のねじれがないので着崩れが起きにくいとされています。この解釈も誤解です。手足の振られる順序にとらわれたり、半身を繰り返すということではありません。
なんばでは、振り出される足と逆足の肩が前方へ動き、さらに肩は下方向へ引き込まれます。体を通る軸が一本ではなく、左右二本の軸を持ち、2軸を交互に使います。軸を交互に支点とすることにより足を踏みかえて前進します。結果的に腕の振りは交差型ではなくなります。通常の一軸の歩行では、振り出された足と同側の骨盤が前方へ動くように回転します。一軸の歩行では、骨盤の回転を補償するために肩を骨盤とは逆方向へ回転させます。足が体の内側へ振り出され、両足は直線に近いラインを踏んで進みます。しっかり地面を後ろへ蹴る、腿を高く上げる、腕を大きく前後に振るが、中心軸感覚の歩き方です。前方へねじった腰や肩は後方へねじり戻さねばならず、エネルギーのロスが大です。一方向へのねじりを止めないと反対方向へねじり戻せません。
短距離走の研究で、海外のトップアスリートと日本人選手との間で、有意な関係にあったのは接地する直前からキック局面の中間地点までの脚の後方スイング速度の差のみでした。引きつけ、腿上げ、振り出しの速度では有意差はありませんでした。後方スイング速度は2倍近く差がありました。彼らのトレーナーの指導は①脚を真下に踏みつける。②脚をターンオーバーさせる、です。ターンオーバーとは足先の軌跡が最高点を通過後急激に下方へ移動する動きです。脚を真下に踏みつけること、脚の後方スイングではなく遊脚の動きを操作することで後方スイングの速度を上げています。足関節を使って蹴る動作はせず、真下に踏みつけます。トップアスリートの足首の運動範囲は約20度、日本人選手は45度近くあり、日本人選手は足首で蹴る動作が大きいことがわかります。
なんば歩きでは2直線走歩行が基本であり、すり足に近い形です。それぞれの足が2直線上を進むことにより、体幹がねじられずエネルギーロスが少なく、脚がターンオーバーしやすくなります。一軸走歩行では、足と同側の骨盤はほぼ同方向に動きます。なんばでは右足が振り出されるときは左腰が前方へ動きます。この骨盤の動きにより、着地足が離地した後のターンオーバーが可能になります。
すでになんばの動きは日本では忘れられながら世界では取り入れられ、応用されて成果を上げています。エネルギーロスが少なく、腰に無理のかからないなんばは介護でも有効です。