離乳食が始まったらしばらくはアレルギー食品は食べさせない方が良い、は誤りです。
今月の話題は、アレルギー発症のメカニズムです。
2000年にアメリカ小児科学会が出した指針では、子供をアレルギーにしないためには妊娠中、授乳中の母親はアレルギー食品を避けること、子供に乳製品を与えるのは1歳以降、卵は2歳以降、ナッツや魚は3歳以降にすべきである、となっていました。日本でも広く知られた指針です。
しかし、指針が出された2000年以降もアレルギー発症の急増は抑えられませんでした。ピーナッツアレルギーの場合、ピーナッツを良く食べていた妊婦から生まれた子供の方がピーナッツアレルギーの発症率が低いことがわかりました。ピーナッツを避けた子供のグループでも17.3%がピーナッツアレルギーを発症しました。ピーナッツをよく食べた子供のグループではピーナッツアレルギーの発症は3.2%にとどまりました。
Tレグのメカニズムがわかった現在では、ピーナッツを食べることでピーナッツという異物への免疫攻撃を止めるTレグ、ピーナッツTレグが作られたからと解釈できます。
ピーナッツアレルギー発症者の91%が生後半年以内にピーナッツオイル入りのスキンクリームを使っていたことがわかっています。特に肌荒れやアトピー性皮膚炎を持っている子供がピーナッツアレルギーを発症しています。
皮膚からアレルゲンをすり込まれることにより経皮感作されたと考えられます。
すし職人の魚アレルギー、そば職人のそばアレルギー、牡蠣の殻むき作業の女性たちのカキアレルギーなども同じです。
体内には食べた食べ物ごとに専門のTレグが存在し、食べ物への免疫攻撃を抑え込んでいます。
腸から入ってきた異物に対して専門のTレグが作られ、アレルギー反応が回避されます。
皮膚から体内に入ってきた異物については、異物と判断されれば感作が起こり、記憶されます。再び侵入してきたときに異物として攻撃されます。
一時ニュースにもなった洗顔石鹸によるアレルギーも同じメカニクスで発症しています。洗顔石鹸に含まれていた加水分解コムギ、グルパール19sが発症させたアレルギーです。小麦は保水や泡立ちのために使われますが、従来のコムギより分子量が大きく、分子量が大きいと免疫細胞の攻撃対象となりやすいことが知られています。洗顔時の皮膚から体内に入ったコムギに対して、感作(経皮感作)がおこり、その後食物として腸から体内へ入ってきたときに、異物として攻撃の対象となり、激しいアレルギーを発症しました。
一度敵とみなしたものについてはその記憶は簡単には消えません。
花粉症も経皮感作で起こると考えられています。風邪などをひいて、気管支の粘膜が炎症を起こしているときに、花粉が皮膚バリアの壊れた部分から体内に入り込み、抗原提示細胞に取り込まれ、異物として記憶され(感作)、再び花粉が体内に入ってくると、攻撃が始まり、花粉症が発症します。
先に腸から吸収されれば、攻撃を止めるTレグが作られ体は異物を受け入れます。先に皮膚から入ってしまうと異物を攻撃対象として記憶します。アレルギーになるかならないかのレースのようなものと考えられています。
腸からいち早く入れるようにすることがアレルギーを予防する方法です。腸から吸収することでその物質のTレグを作り出すことができ、アレルギーの発症を予防します。