象の歯

今月の話題は象の歯です。 人間は乳歯から永久歯へ1回だけ生え換わりますが、象は6回歯が生え換わります。第6臼歯が最後の歯になります。第1臼歯は第2乳臼歯、第2臼歯は第3乳臼歯、第3臼歯は第4乳臼歯、第4臼歯は第1大臼歯、第5臼歯は第2大臼歯、第6臼歯は第3大臼歯に相当します。第6臼歯である第3大臼歯は30歳ころから60歳ころまで使われますが、すり減ってダメになるともう食事ができずに象は衰弱死してしまいます。
通常1本ずつのわらじのような形をした平たい臼歯が上下左右にあります。
年齢とともに後方から次の歯が生えてきて交換していきます。
ヒトの歯のように垂直に交換する場合は乳歯が脱落し、その後下から後継歯が生えてきますが、象の場合は後方から生えてくる交換の方法をとるため、歯のない時期はありません。
1本の歯は細長くつぶれた長円形の象牙質の周囲をエナメル質が取り囲み、そのエナメル質の層をセメント質で層板状(ラメラ)に束ねた構造をしています。草や葉をすりつぶして咀嚼すると、歯の咬耗が激しく、すり減りが早いので、人よりも草食獣では歯の長さが長い長冠歯です。
ほとんどの動物では歯が萌出する前にエナメル質の形成は終わっています(短冠歯)。 長冠歯の動物(象、馬、牛など)では歯の萌出後もエナメルの形成が継続し、その後歯根が形成されます。ネズミの切歯、ウサギの臼歯のようにエナメル形成が生涯続く場合は無根歯と言います。長冠歯では歯根がまだできていず、歯周靭帯はエナメル質には接着できないためエナメル質の上にセメント質を形成し、そこに歯周靭帯を埋め込み、歯を顎骨に固定しています。
牛、羊などの進化した草食動物は4つの胃袋を持ち、共生させた腸内細菌で、発酵消化しますので、咀嚼だけに頼らず食物を消化できます。
エナメルもそれほど凹凸はなく、エナメル質を被覆しているセメント質も象や馬に比べると薄くてすみます。
馬、象は発酵タンクを持たないため、咀嚼のみで、草を消化しようとするため、歯に対する負担が大きく、歯が消耗しやすい生物です。象は歯を長持ちさせるために臼歯を24本用意し、そのうち12本は乳歯です。上下左右で1本ずつ使い、60年の生涯、歯を持たせます。馬は小臼歯12本、大臼歯12本を持ちます。24本の歯を一面に並べ、咬合面を広くすることで、長期の使用に耐えるようにしました。歯の大きさと数が大きいため馬の顔はとても長くなりました。
馬の乳歯と永久歯は交換しますが、ほぼ同じ大きさです。
毎年2~3mm咬耗します。臼歯の長さは6~8cmです。逆算して馬の寿命は30歳から40歳となります。