歩行することは血液循環、造血に多くの良い影響を及ぼします。

筋肉の仕組み

今月の話題は歩行と血液循環、造血についてです。
ヒトの筋肉は下が単頭で、上が多頭になっている形態をとります。これはふいごの形と同じで、筋肉が収縮すると下が締まっているため上に向かって圧力がかかり、血液が押し上げられます。
典型的なのはふくらはぎの筋肉である腓腹筋(ハムストリング)で、アキレス腱が歩行で伸長されると形状ポンプ作用が働き血液は上に押し上げられます。
心臓そのものもハート形であり、収縮すると心尖にある心室から上へ血液を押し上げやすい形状をしています。左心室からは大動脈へ上方へ、右心室からは肺へ上方へ血液は送り出されます。心臓の拍動により血液は上に噴き上げられ、形状ポンプ作用が発揮されます。

血液循環について

血液還流は心臓から大動脈を通って毛細血管まで到達し、また心臓まで戻りますがその距離は主要血管だけでも数百km、毛細血管を含めると約10万kmといわれています。
当然、血液循環は心臓ポンプのみでは不十分なので、全身の骨格筋の形状ポンプ作用で血液は心臓まで戻ることができます。
起きて活動すること、特に歩行することにより、血液循環は促進されます。
寝たきりになると形状ポンプ作用は働かなくなり、心臓に重い負荷を与えることになります。

造血の仕組みについて

骨形成と造血の仕組みも歩行と関係します。
歩行時、足が接地すると地面から圧力がかかり、その場所に電位差が生じ電子が帯電します。この電子がカルシウムイオン(+2)と結びつくことでカルシウムは沈着し、骨ができます。(骨ピエゾ効果)
骨は人間が昼間活動している間に形成されて蓄積され、血液成分も圧力の変化で作られることが知られています。
赤血球は造血幹細胞から作られますが、これは気圧が下がると産生が開始されます。
気圧の低い高地では赤血球が盛んに作られることが知られており、骨髄に造血器官をもつ長管骨は歩行により圧力がかかったときに容積が狭まり、圧力が抜けると広がります。
白血球のうち顆粒球と単球は圧力が高くなると作られ、リンパ球は圧力が低くなると産生が開始されます。

歩行について

ヒトは歩行することで血液循環、骨造成、造血作用、など多くの生理機能を行っており、自然治癒力は歩行から生まれるとさえいえます。
歩くときは物を持たず、腕を振る時は肩を痛めないように肘を屈曲させましょう。親指は握らずに立てて歩きましょう。そうすることで心臓に負担をかけないようにします。
連続して30分~40分を目安に歩行することをオススメしますが、歩行は全身運動ですので、なれないうちは無理をせず徐々に増やしましょう。
呼吸は吐くことを意識し、呼気2回、吸気1回を基本としてリズミカルに行うと良いといわれています。