「あご」の未発達について

近年は顎の未発育により、第2大臼歯の親知らず化が起こり始めています。第2大臼歯が生えてこない、内側過ぎて上の歯と噛み合わないなどの症状がみられます。

今月の話題は「あご」の未発達です。

あごの成長と食べ物の関連性

現代の子供のあごの発達は食事の軟食傾向が強くなってきた事により、あごの未発達や形態の変化が多く見られ、さらには顔貌、全身にも影響が出ています。高カロリー高タンパク質の食事により歯そのものが大きくなっていることも報告されています。

小さい顎と大きな歯では歯の整列は困難です。そのため前歯部分の叢生とは別に臼歯部分の叢生が発生し、その結果として第2大臼歯の萌出障害が起こります。

ウサギに軟食や粉末の飼料を与えると、廃用性の筋萎縮が起こり筋繊維の直径が減少することが知られています。頬骨弓幅径の減少、咬筋浅層の付着部面積の減少,下顎枝幅径の減少などの咀嚼筋付着部の成長への影響、下顎角の開大などの顎骨の成長方向への影響があります。

ラットの液状飼料飼育により臼磨運動をしなくなることにより、咬筋よりも内側翼突筋の萎縮が起こります。咬筋は主にあごの挙上に関与し、内側翼突筋は咬筋より遅れて閉口相の後半から咬合相に働きます。食物性状の違いによる咀嚼パターンの変化が、あごの成長発育に影響することを示唆しています。

成長後、固形飼料に変えても、筋繊維の多少の肥大はありますが、骨格、筋には大きな変化が起こらないことも観察されており、成長期の重要性が分かります。顎骨の形態は歯を介しての影響より、咀嚼筋を介しての力の影響のほうが大きいことが分かります。

あごの未発達による影響とは?

あごの未発育は第3大臼歯の埋伏を引き起こすことは周知のことですが、近年は第2大臼歯の埋伏、傾斜等の発生が多くなってきています。下顎第2大臼歯の完全水平埋伏、歯軸が近心傾斜し第1大臼歯遠心部に接触し歯根歯冠境部の「くびれ」にはまり込み、萌出障害を起こしているもの、さらには第3大臼歯が第2大臼歯の上に重なるもの、著しく舌側傾斜を起こし、上顎の第2大臼歯と鋏(はさみ)状咬合を起こすものもあります。

このような場合の顎骨の状態を調べた研究ではやはり顎骨自体の未発育が大きな原因となっていることが分かります。共通して下顎骨体の短小が認められました。下顎骨は小さくなっていないという研究もありますが、側貌X線写真上の下顎骨の前後の大きさは変わらくとも下顎骨の幅径がが狭くなっていることが観察されており、このことから実際の萌出スペースはやはり小さくなっていると考えられます。

第1大臼歯までの歯列が正常に配列できても第2大臼歯の萌出余地がなければ第2大臼歯のためのスペースの確保のためにやむなく小臼歯部の抜歯を選択せざるを得ないこともあります。第2大臼歯の概ねの萌出を待たないと結論できないこともあり、長期の観察が必要になります。