歯数から見る人類の進化歴

ヒトの歯はだんだん少なくなっていく傾向があります。哺乳類の基本は44本でした。今ヒトでは32本です。将来は20本になる予想もあります。

進化に伴う歯数の変化について

今月の話題は進化に伴う歯数の変化です。高等哺乳動物(真獣類、胎盤を持つ哺乳類。カモノハシ、有袋類は含まない)の歯の基本の数は44本です。歯の数は歯式であらわされます。前歯、犬歯、小臼歯、大臼歯の歯の数を順に表記し、3143と書かれます。前歯が3本、犬歯が1本、小臼歯が4本、大臼歯が3本です。合計11本。これらが上下左右にあり、44本です。霊長類の歯は進化とともに減少していくことが知られています。

原始的なサル、ツパイの歯数

霊長類の最も原始的なサル、ツパイは上顎2133、下顎3133で、合計38本です。上顎の前歯1本がなくなり、上下顎とも小臼歯が1本減って3本になりました。キツネザル類(原猿類)とオマキザル(広鼻猿類)は2133です。上下とも前歯は2本なくなり、残った前歯は2本。小臼歯は上下とも1本少ないまま維持し、3本です。合計36本。

類人猿、ヒトの歯数の変化

類人猿、ヒトでは2133です。前歯は2本、犬歯1本、小臼歯も2本、大臼歯は親知らずを含めて3本です。合計32本です。

ヒトで現在残っている小臼歯は本来は第3、第4小臼歯だったものです。猿人から新人までの間では大臼歯の大きさがだんだん小さくなっていきます。前歯、犬歯の大きさはあまり変わりません。大臼歯が小さくなってきたことは大臼歯の役割が少なくなってきたことと関係するといわれています。咀嚼力が減少したと考えられています。

原人では火を使った調理ができるようになり、食物が食べやすくなったためと考えられています。

ネアンデルタール人(旧人)では原人に比べてさらに歯が小さくなっていきます。調理法がさらに発達したためと推測されています。

クロマニヨン人(新人)では歯の退化が大きさ形ばかりでなく、先天欠如の歯が出てき始めていることが特徴です。第3大臼歯の欠如率はクロマニヨン人では3.9%でした。第3大臼歯の欠如率については日本人では、縄文時代5%、弥生時代には20%、明治大正期には30%、昭和初期には50%となりました。昭和後期と平成では20%と持ち直しています。栄養状態の向上、生活様式の変化が原因といわれています。歯とあごは異なる因子によって支配されているため顎骨の縮小が歯の縮小より激しく、それが現代の不正歯列の原因となっています。

現代人の歯数とこれからの変化予測

現代人の歯の先天欠如は第3大臼歯だけではなく、上顎側切歯や、上下顎第2小臼歯、下顎前歯にも現れています。日本小児歯科学会の日本人の第3大臼歯を除く歯の先天欠如率は10.1%であったと報告されています。

未来の予想では、1122、上下前歯が1本になり、合計24本。さらには第2乳臼歯が晩期残存し、第1大臼歯化し、第二大臼歯以後が欠如する予測もあります。1112です。その場合は合計20本です。