登校前のおなかが痛いなどの過敏性腸症候群では腸脳相関により腹部の痛みを感じやすくなっています。

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今月の話題は過敏性腸症候群です。

 

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome;IBS)とは?

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome;IBS)は炎症や潰瘍などの器質的な疾患がないにもかかわらず下痢や便秘、腹痛などが2か月以上続き、排便の回数の変化、便の形状の変化を伴う疾患をいいます。排便後、腸症状は改善することもその特徴です。成人では10%~15%の発症率です。小学生1.4%、中学1~2年生2.5%、中学3年生~高校1年生5.7%、高校2年生~3年生9.2%の発症率です。成長とともに成人に近づきます。男女比は1対1.6で女性に多く発症します。男性は下痢症状が多く、女性は便秘症状が多くみられます。

 

主な原因

消化管の運動異常、消化管ホルモン、内臓知覚過敏と炎症、腸内細菌叢の変調、アレルギー、免疫異常、心理社会的要因、精神的ストレスなどが関連して発症するとされ、複数の要因が関連しているとされています。脳と消化管のシグナル伝達経路「腸脳相関」の異常が大きく関連することが言われています。ストレスが下垂体でストレス関連ホルモンを産生させ、中枢神経を介して腸管神経系に働き、消化管の異常運動を起こすとされています。消化管の内臓知覚過敏や知覚閾値を低下させ、腹痛を感じやすくします。腹痛の増強や持続がさらに不安を増大させ負のスパイラルに入ることもあります。発症の10%は感染性腸炎から継続して過敏性腸症候群を発症しています。悪化の原因は生活習慣やストレスです。学校生活、友人関係などの評価を行い、学校や家庭の環境調整をすることが有効です。精神的ストレスを解消することで、改善に導く場合が多くあります。

 

どんな人がなりやすい?

発症するのは自分の喜怒哀楽を言葉で表現できない、あるいは自覚できないアレキシサイミア(失感情)傾向の人がなりやすいといわれています。過敏性腸症候群の診断基準を満たさない機能性腸症候群では基本的には経過を見ます。似た症状として細菌性腸炎、ウィルス性腸炎、潰瘍性大腸炎、寄生虫疾患、クローン病、がんなどがあり、そのようなものでないことを確認する検査が必要です。一度IBSと診断確定した後でも夜間の腹痛、下血、嘔吐、体重減少などの警告症状が出現するときは再度器質的な問題を確かめる必要があります。

 

治療法

治療法はまず生活習慣の改善とストレスの除去を計画します。腸脳相関のために腹痛が感じやすくなっていることを理解するだけで症状が軽減することもあります。炭水化物や脂肪分の多い食事が症状を悪化させることが言われており、控えるようにします。コーヒーや香辛料の多い食べ物を控えます。下痢に対しては食物繊維の多い食物を心掛け、冷たい飲料や牛乳の過剰摂取を控えます。便秘に対しても食物繊維の多い食物を心掛け、プロバイオティクスで腸内細菌叢の改善を試みます。運動療法で腸の動きをよくします。運動はストレス解消にもつながります。不登校、起立性調整障害、不眠、頭痛などの心身症と併存することがあり、また、食物アレルギーなどでカモフラージュされ診断がつかないこともあります。