哺乳類ではブドウ糖を直接乳児には与えません。ブドウ糖を1度乳糖にしてから取り込むことで、ブドウ糖の害を回避しています。

  • 哺乳類ではブドウ糖を直接乳児には与えません。ブドウ糖を1度乳糖にしてから取り込むことで、ブドウ糖の害を回避しています。

今月の話題は乳糖、乳脂肪に見る哺乳類の特徴です。

ブドウ糖は新生児にとっても必要な栄養素であり、特に霊長類の脳の発達には欠かすことができません。
哺乳類ではブドウ糖を直接乳児には与えません。ブドウ糖を乳糖に変化させてから乳汁として与えます。乳腺細胞がブドウ糖をガラクトースに変え、乳糖合成酵素によりガラクトースをブドウ糖に結合させて乳糖にします。乳糖合成酵素は二つの糖を結合させます。
乳児に摂取された乳糖は再び乳糖分解酵素ラクターゼにより分解され、ブドウ糖とガラクトースになり、ガラクトースは肝臓でブドウ糖に変えられ吸収されます。
このように複雑な代謝回路を使って乳糖を作りながら、取り込んだ乳糖は再び消化機構でブドウ糖に戻して体に取り込みます。

脳は大量にブドウ糖を消費し、特に出生後は急激な成長のため大量のブドウ糖が必要です。通常ヒトの血中ブドウ糖は0.07~0.14%であり、この上限を超えると全身に異常が起きます(糖尿病)。このように多量のブドウ糖を乳児が必要としているときに直接ブドウ糖を摂取させるのではなく一度乳糖にしてから取り込むことで、ブドウ糖の害を回避しています。

霊長類の乳の特徴として乳糖の多さがあり、ヒトでは7%,牛では5%含まれます。ほかの多くの哺乳類でも2%以上あります。乳腺細胞は高濃度の乳糖にさらされていますが、支障はありません。すべての細胞は乳糖を利用できず、どんなに高濃度であっても無糖状態と同じです。ブドウ糖であれば0.14%超えられないところが、乳糖であれば濃度の制限がありません。
ブドウ糖の大半は小腸のラクターゼにより分解され、一部は大腸に届き、腸内細菌のビフィズス菌や、乳酸桿菌などが代謝し、酢酸や乳酸を排出します。酸の排出で腸内のPhは下げられ、悪玉菌の増殖が抑えられます。
オリゴ糖(3糖類)もヒトの乳には多く含まれます。ラクターゼは乳糖(2糖類)は分解しますが、オリゴ糖(3糖類)は分解しません。そのまま小腸、大腸に運ばれ、細菌の腸管壁付着を妨ぎ、摂取された食物のスムースな腸内移動ができるようにします。

乳脂肪も乳腺細胞が作り、乳脂肪は乳腺細胞内に脂肪滴として存在します。この脂肪滴が細胞膜を通過して乳汁に入るときに、脂肪滴は細胞膜ごと細胞外に排出されます。細胞膜で覆われた脂肪滴が乳汁に分泌されます。濃度の濃い脂肪であっても、細胞膜に包まれているため細胞には認識されず、体に全く害はありません。海獣などは乳脂肪が30~60%にもなりますが、問題なく乳児に飲ませることができます。
脂溶性のビタミン類(A、D、E、K)も脂肪の中に入ることで、乳児へ問題なく移行できます。乳児の骨の代謝に欠くことのできないビタミンDも不足することなく乳児に与えることができます。