免疫細胞には、暴走するT細胞を制御する制御性T細胞、通称Tレグがあります。この発見はノーベル賞の候補にもなっています

  • 免疫細胞には、暴走するT細胞を制御する制御性T細胞、通称Tレグがあります。この発見はノーベル賞の候補にもなっています

今月の話題は、制御性T細胞、通称Tレグ(Regulatory T Cell)です。Tレグは免疫細胞の攻撃指令が伝わるのを物理的に邪魔したり、攻撃が伝わらなくなるような物質を出したりして、T細胞の動きを止めてしまう働きをする免疫細胞です。大阪大学の坂口教授が発見しました。

通常、皮膚などから細菌が侵入すると、マクロファージや樹状細胞といった抗原提示細胞が抗原を取り込み、リンパ節のT細胞に抗原提示を行います。T細胞は異物を有害と判断すると排除攻撃指令を出します。T細胞は分裂して数を増やし、現場にてサイトカインを放出し、周囲の免疫細胞を活性化し、侵入者を攻撃させます。
マクロファージ、キラーT細胞、B細胞などが実働部隊となって攻撃します。この時に誤って自分自身を攻撃してしまうのが自己免疫疾患です。1型糖尿病(免疫細胞が膵臓のβ細胞を間違えて破壊する)やクローン病(免疫細胞が誤って腸の細胞を攻撃してしまう)などがあります。自己免疫疾患の治療には免疫抑制剤を使うことで対応しますが、感染症やガンに対する免疫力も失われてしまうため、難しい治療です。
Tレグを利用すると、自己免疫疾患を引き起こしているT細胞のみ抑え込めばよいので、治療が易しくなります。
臓器移植では、移植した臓器を異物と判断し、攻撃してしまうため、移植した臓器が定着しないことがあります。通常は免疫抑制剤を用いて免疫の攻撃を少なくして定着を待ちます。
徐々に免疫抑制剤の使用を減らしていきますが、いったん体が臓器を受け入れたように見えても免疫抑制剤を減らすと、免疫の攻撃が再び始まり、結局臓器が定着しないことがあります。
このような場合に、移植した臓器と一緒にTレグを体内に入れると、免疫を減らさずに臓器が定着できます。

ガン治療においても、ガンがTレグに働きかけて、T胞の攻撃を止めていることがあります。このT細胞の動きを間違えて止めているTレグを止めて、T細胞の攻撃を復活させ、ガンへの攻撃を再開させる治療も始まっています。 身近なところでは、花粉症にもTレグが関与しています。風邪をひいて粘膜が炎症を起こして皮膚の通過が弱っているときなどに、バリアを通過して花粉が体内に入ってくると、入ってきた花粉をT細胞が間違えて攻撃対象と判断し、攻撃指令を出してしまうことがあります。
T細胞の攻撃指令を受けたB細胞がIgE抗体を産生し、IgE抗体はマスト細胞に接着します。
再び花粉が体内に侵入してきたときに、接着したIgE抗体がアンテナの役割をして反応し、マスト細胞内のヒスタミンが放出されます。
ヒスタミンは炎症症状を起こして、くしゃみや涙目で花粉を体内から排出しようとします。花粉症を発症しない人の場合はT細胞が花粉を無害と判断した場合と、もし有害と判断した場合でもリンパ節内のナイーブTレグ(Tレグを作る細胞)が抗原提示を受け、花粉への攻撃を止めるTレグを作った場合です。T細胞の攻撃命令は実働部隊の免疫細胞たちに伝わらず、花粉症は発症しません。