脳の進化

今月の話題は脳の進化です。
ヒトの脳は他の動物に比べて大きく巨大化しています。脳にどのくらいの考える力があるかを検討するとき、脳化指数が使われます。
体の大きさによって脳容積の評価が左右されないよう脳容積を体重の三分の二乗で割って求めます。(現在は四分の三乗に変わりました。)
チンパンジーでは0.308、オランウータンでは0.290、ウマは0.084、ウシは0.060、イヌは0.162、それに対してヒトでは0.866と、圧倒的に大きな数字となります。
単純に比較はできませんが、数字の大きいほうが知性があるという評価です。
一般に霊長類は大きな脳化指数を示しますが、これは木に登るという生活が脳の機能的発達を促し、巨大化させたためと考えられています。
ウザギやウマ、ウシなどの草食獣は、脳化指数は小さく、敏捷で複雑な狩りをする肉食獣では、脳化指数が大きくなります。
猿人のアウストラロピテクスの場合は脳容積400cc位50キロほどだったと想定すると、チンパンジーやオランウータンと同程度の脳化指数です。
霊長類の中でもホモサピエンスの場合は、道具の使用や製作などの手先の作業がさらに脳を高度化巨大化させていきました。
他の霊長類でも道具を使うことはありますが、ホモサピエンスの他の霊長類との決定的な違いは、道具を使うだけでなく道具を製作することです。
オランウータンは木の枝で水の深さを測って河を渡れるかを判断したり、チンパンジーは石を使って硬い木の実を割ったりしますが、両者とも道具の製作はしません。
アウストラロピテクスより少し新しいガルヒ猿人は石を割っただけの石器を使っていました。
ここでおそらく利き手が形成されたと考えられています。
大脳半球の左右にも分化が起こり始めたと考えられます。
二足歩行することにより咽頭が、重力により下方へ落ち込み、咽頭の周辺に空洞が作られ、この空洞を使い、さまざまな声の作り分けをするようになります。
猿人ではまだですが、原人の段階になると咽頭の落ち込みがかなりな程度まで進んでおり、言語の発達が考えられ、さらに脳の発達を進めました。
言語の中枢は左の脳に偏るため、原人の左右の脳の形の非対称性からも、言語を操る部位が発達し始めていると指摘する研究もあります。
現代のヒトの脳でも左側の方が右より若干大きいことが統計的に確かめられています。右利きの多いヒトでは左側の大脳が速く発達し、結果的に左脳の方が大きくなったと考えられています。