筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)と繊維筋痛症(FMS)

今月の話題は、全身性の筋肉痛、筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)と繊維筋痛症(FMS)です。
① 筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)は女性に多く、筋・筋膜およびその周囲の軟部組織の疼痛症候群を言います。
MPSでは起立に関連する筋肉、首、肩、腰の筋に痛みを生じます。レントゲン、病理検査、血液検査でも異常は見つかりません。 診断基準は、
 A 筋に触れると索状硬結を触診する。
 B 索状硬結内に鋭敏な圧痛点がある。
 C 痛みの愁訴は索状硬結内の圧痛部位を圧迫した時に認知される。
 D ストレッチさせようとしても痛みのために可動域制限がかかる。
筋肉内に圧痛点とトリガーポイントがあります。トリガーポイントとは刺激した部位から離れた部位に痛みが引き起こされる圧痛点のことをいいます。トリガーポイントの多くは鍼灸のツボと一致していると言われています。筋肉に高張食塩水を注射するとそれがトリガーになって広い範囲に痛みが現れます。関連痛、放散痛ともいわれます。ケネディ大統領の背筋痛を、圧痛点にプロカインを注射することで硬結を弛緩させ痛みも消失させたことで有名です。
② 繊維筋痛症(FMS)は体の広い範囲にわたって起こる原因不明の筋肉痛症候群です。
40~50代の女性に多く、痛みだけではなく不眠、全身の疲労感や種々の症状を伴います。診断基準は3か月以上にわたる痛みがあり、圧痛点を4Kgの力で押したときに全身18か所設定されている圧痛点の内11か所以上で痛みを訴えたときに診断されます。筋肉の痛みとこりの好発部位は首、肩、臀部、など上半身に両側性に出ます。目の奥の痛み、口腔内の痛み、頭痛など様々な疼痛症状があります。安静時にも痛みがあります。痛い部位が移動したり季節により変動したりします。疲れ、こわばり、睡眠障害、頭痛、感覚異常、軟組織の腫れぼったい感じ、過敏性腸症候群などの症状が高頻度で合併することが知られています。原因はわかっていません。
日本ではさほど多くないと考えられていましたが、実際には有病率は2%ほどもあり、さらに的確な診断がなされていない場合が多く、今後も増えていくことが予想されています。抗うつ剤の投与が有効であり、軽い運動も有効であると言われています。通常云われている筋肉痛は乳酸がたまったために起こるのではありません。筋肉痛時の乳酸値は高くありません。運動により、筋繊維、筋膜や周辺の結合組織が破壊され、逸脱酵素やミオグロビンンが血中に排出されると細胞内カルシウムイオンが増え、タンパク分解酵素が活性化され、筋肉の破壊がさらに進みます。筋肉の破戒産物は肥満細胞を活性化し、それによって産生された炎症メディエーターや、サイトカインが腫脹、痛みを引き起こすと考えられています。