りんご病

今月の話題はリンゴ病です。正式な名前は伝染性紅班(でんせんせいこうはん)といいます。

主に、小児に発症します。ほっぺがりんごのように赤くなるのでりんご病と呼ばれます。両側の頬がほてったり、かゆくなります。

ヒトパルボウィルスB19というウィルスによる感染です。レセプターは赤血球膜表面のP抗原で、P抗原保有細胞、特に赤芽球前駆細胞に感染し、増殖します。感染経路は飛沫感染が主で、潜伏期間は6~11日。発疹までは16~18日です。発疹が出る1週間から10日前位に発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感がみられることがあります。出ないこともあります。数日で血液中のウィルスが消失し、症状もなくなります。

1週間ほど無症状の時期があり、発疹が出現します。両側のほっぺの発疹から始まり、肩、腕、大腿に赤い平坦な発疹が出現し、その後レース状(網目状)になります。発疹はかゆみを伴うことが多く、通常5~7日で消えていきますが、日光や運動で刺激されて再出現することもあります。成人では膝の関節痛がみられることがあります。ほとんどは合併症を起こすことなく、自然に治癒します。全身性エリテマトーデス、関節リウマチとの鑑別が必要です。

リンゴ病への治療は特に行われません。自然に治ります。かゆみが強い場合は抗ヒスタミン剤が使われます。頬が赤くなったときはすでに、感染の時期を過ぎているので学校へ行っても大丈夫です。ウィルスが排泄されるのは特徴的な紅班が現れる1週間ほど前までです。免疫のない妊婦に感染した場合は胎盤を介して胎児にも感染します。胎児はウィルスを駆除できず持続感染となり、非免疫性胎児水腫、心不全などの症状をきたすこともあります。時には胎児死亡に至ります。妊娠初期、中期の感染が危険です。感染しても症状の出ないこともあり、妊娠中に上の子が感染した場合は産婦人科医に相談する必要があります。非特異的症状期に本症を診断することはほぼ不可能です。発疹出現後は特徴的な発疹が診断の決め手となります。免疫正常者ではヒトパルボウィルスB19特異的抗体の測定を行います。IgM陽性では現在あるいは近い過去の感染、IgG陽性では過去にヒトパルボウィルスB19に感染し、免疫があることがわかります。抗体産生不全を伴う免疫不全者では、抗体値測定が診断に役立ちません。血中ウィルスDNA解析が必要です。ワクチンはまだありません。