コロナと味覚障害について

コロナと味覚障害について

今月の話題は新型コロナウィルスと味覚障害です。

味覚障害の障害部分は臭覚障害と同じく受容器と考えられており、アンギオテンシン変換酵素Ⅱ(ACE2 Angiotensin-Converting enzyne 2)とTMPRESS2(Transmembrane protease serine-2)、furinが関係しています。

ACE2はアンギオテンシンⅡをアンギオテンシン(1-7)に転換し、アンギオテンシンⅡの昇圧作用を弱める酵素です。

SARS―CoV-2ウィルスではウィルス表面に発現するスパイクタンパクがACE2と結合し細胞内に侵入します。

そのときにTMPRESS2が侵入を助け、furinがスパイクタンパクをS1とS2のサブユニットに分離し、ウィルスの侵入において活性状態にするとされています。

ACE2は口腔内、舌背、唾液腺に多く存在します。小児には少ないことがわかっています。

味細胞にもACE2、TMPRESS2、furinの発現が陽性であったとされています。

ただし、味覚受容器においてACE2がSARS―CoV-2と結合することにより、どのような変化を受容器に起こさせるか機序はわかっていません。

味覚障害と実際の数値

臭覚低下586人中433人が味覚低下を訴えましたが、実際に味覚が低下していたのは4%未満であったことが報告されています。

臭覚と味覚は相互に作用し、脳で統合されるため自覚的な評価として混合されやすいことは以前から言われていました。

新型コロナウィルスによる味覚異常は主に臭覚障害による風味障害であることが示唆されます。

またCOVID-19による嗅覚味覚障害の特徴として速やかに改善する例が多いことが報告されています。

味覚障害が起こるしくみ

COVID-19の嗅覚障害の発生機序は画像診断、動物実験により、(口編に臭)シュウ裂の浮腫性炎症性閉塞による気導性臭覚障害とされています。
臭上皮は臭神経細胞とそれを支える支持細胞、基底膜直上の基底細胞により構成されています。上皮下固有層にはボウマン腺があり、粘液で上皮表面を潤しています。

ACE2とTMPRESS2は支持組織とボウマン腺に局在しており、ウィルスは支持組織とボウマン腺に感染し、炎症を起こし、粘膜の浮腫と分泌物の増加を生じさせます。

ハムスターによる実験では感染後3日で臭神経上皮の広範な剥脱が見られその後再生しました。一部は完全には回復しないことも観察されました。

COVID-19による嗅覚障害が短期間で回復することはウィルスが臭神経に直接ダメージを起こさせるのではなく周辺細胞の炎症により臭覚障害が発現していたと考えられます。

臭覚味覚障害が6か月以上持続する例も6%あることが報告されており、そのような長期間障害が残存する場合は臭神経まで障害が及んでいること、臭上皮の回復不全が示唆されます。

新型コロナ感染症での嗅覚障害、味覚障害で長期残存する場合は嗅覚刺激療法、漢方薬(当帰芍薬散)、ステロイド点鼻を組み合わせて対応します。