トランス脂肪酸と電子レンジの関係。牛乳をレンジはNG?

今月の話題はトランス脂肪酸です。

トランス脂肪酸の種類について

脂肪酸は炭素の結びつき方で二種類に分かれ、炭素の二重結合がない飽和脂肪酸と二重結合のある不飽和脂肪酸とに分類されます。さらに不飽和脂肪酸の二重結合についた水素原子の付き方によりシス型とトランス型に分かれます。シス型は二重結合の同側に水素原子が付き、トランス型は対角線上に水素原子が付きます。天然の動植物の脂肪に存在する不飽和脂肪酸はシス型です。トランス型のつき方をしている水素を一つでも持っている不飽和脂肪酸をトランス脂肪酸といいます。

 

天然油脂に水素を添加?

常温で液体の植物油や魚油から硬化油を製造するときに、水素を添加し炭素の二重結合の数を減らして、飽和脂肪酸の割合を増やします。この際に飽和脂肪酸になり切れなかった一部の不飽和脂肪酸のシス型結合がトランス型に変化してトランス脂肪酸になります。水素添加して作った油を使って製造されたマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどや、それらを原料としたパン、ケーキ、ドーナッツ、揚げ物にトランス脂肪酸が含まれます。

 

加熱のしかたでも発生する!

トランス脂肪酸は脱臭などのための高温処理や、マイクロ波加熱器(電子レンジ等)によっても多量に発生します。例えば牛乳を通常の加熱ではなく電子レンジによる加熱をすると共役リノール酸が減少しトランス脂肪酸が増えます。トランス脂肪酸にはたくさんの種類があります。二重結合n個の炭素を持つ不飽和脂肪酸にはシス型とトランス型との2種類あるので、不飽和脂肪酸の種類は2のn乗個です。そのうちすべてシス型である不飽和脂肪酸は1種類のみなので、n個の二重結合を持つトランス脂肪酸は2のn乗-1個の種類があることになります。とてもたくさんの種類があることがわかります。

 

心臓疾患のリスクに関係しているデータあり!

トランス脂肪酸は心臓疾患のリスクを増加させるというレポートが2003年WHOのFAOにて提出されました。悪玉コレステロール(LDL)を増やし、善玉コレステロール(HDL)を減らします。主として虚血性心疾患(冠動脈の閉塞、狭心症、心筋梗塞)の発症と認知機能の低下が指摘されています。トランス脂肪酸の血中濃度が低い高齢者では脳萎縮や認知機能低下があまり起きていません。

 

良質な油脂肪分に置き換えると改善

多価不飽和脂肪酸(ω6脂肪酸、ω3脂肪酸であるDHA、EPA等、共役リノール酸等)に置き換えることで血中脂質の状態を改善できることが確認されています。またトランス脂肪酸はω3脂肪酸の生成を抑制します。ω3脂肪酸は人間にとって必須脂肪酸であり、攻撃性を減少させます。トランス脂肪酸の摂取が多いほど攻撃性が高まります。トランス脂肪酸の摂取の多い女性では炎症反応が確認され、体内で炎症が生じていることがわかっています。

 

トランス脂肪酸と様々な疾患の関係性

アトピーなどのアレルギー症への影響が指摘されています。不妊症のリスクも高まります。αリノレン酸がDHA、EPAに置き換わることを阻害することも判明しました。2003年WHOの食糧農業機関(FAO)から一日の全脂肪酸摂取のうちトランス脂肪酸は1%未満に控えるべきと勧告が出されました。国によっては法的に含有量の表示を義務化したり、添加を制限している場合もあります。

 

日本では使用量に規制がない!

日本では日本人が一日に摂取するトランス脂肪酸の平均が全カロリーの0.3から0.6%であるという(米国では2.6%)ことから(WHOFAOの勧告1%未満であるため)規制は行われていません。アメリカでは2015年から部分水素添加油脂の食品への使用規制が行なわれています。