ポジトロン断層撮影(PET)は、1cm以下のがんの検出に最も有効といわれています。

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今月の話題は近年の画像検査法です。

一つめは核磁気共鳴画像法(MRI)です。MRIは被験者に高周波の磁場を与え、人体の水素原子に共鳴現象を起こさせて、反応する信号を検出し、画像化するシステムです。水分の多い脳や血管などを診断することができます。物質を構成する原子核には原子核スピンにより磁石の性質をもつものがあり、通常はバラバラな向きにあるためお互いにキャンセルされ、磁化されていません。外部から強い静磁場をかけると核スピンの磁化は磁場をかけた向きに変わり、全体として同一方向へ弱く磁化されます。これに特定のラジオ波を照射すると核磁化は静磁場方向を軸として歳差運動を行います。(コマの首振り運動と似たもの)パルスの照射を止めると徐々にもとの状態に戻ります。この戻る速さに組織による違いがあり、この違いを画像化します。

利点としてはX線を用いないため被ばくがない。画像のコントラストがCTより高い。造影剤を用いなくても血管画像が得られる。骨によるアーチファクトが少ない。骨に囲まれたトルコ鞍や脳底の病変が解りやすい。軟骨や靭帯の評価ができる。脳梗塞超急性期では早期に病変がわかる。

欠点としては強力な磁場の力学的作用、騒音、検査時間が長時間になる、心臓ペースメーカーなどの金属が体内にあるとできない。接合プレート、ボルトがあると画像が乱れます。磁気カードなどは読み取れなくなる。マスカラ、アイラインなどの化粧品の中には磁性体を含むものがあり、検査により熱傷を起こすことがある。カラーコンタクトレンズや入れ墨、貼付薬にも磁性体を含むものがあり、熱傷を起こすことがある。費用が高く大掛かりな設備が必要になる。

もう一つはPET(ポジトロン断層撮影)です。PETは陽電子検出を利用した断層撮影技術です。主に中枢神経系の代謝レベルを観察するのに用います。近年では、がんの診断に多く利用されます。CTでは外部からX線を照射して全体を観察しますが、PETでは生体内部の放射線トレーサーを観察します。CT画像は形態画像であるのに対してPETは機能画像と呼ばれます。

がんの多くは、増殖スピードが速いため、ブドウ糖代謝が盛んなことを利用します。(ワールブルク効果)放射線を出す検査薬(ブドウ糖に似た糖に放射線物質を結合させたもの)を注射し、取り込み具合によって部位の機能を判別します。胃がん、大腸がん、肝細胞がん、脳腫瘍のように正常細胞もブドウ糖代謝が盛んな臓器では感度が下がります。肺がんのうち細気管支肺胞上皮がんでは検出しにくいといわれています。甲状腺がん、肺がん、食道がん、子宮癌、卵巣がん、転移した肝臓がん、悪性リンパ腫の発見に有効といわれています。近年はCTと組み合わせたPET-CTが使われ始めました。1cm以下のがんの検出には最も有効といわれています。