体の動揺

今月の話題は体の動揺です。ヒトが二本足で立っているとき体は常に揺れています。自動制御の結果として小さく揺れながら、安定しています。二足歩行のできる人型ロボットのアシモは揺れませんが、2本足で立つために、常に中腰です。中腰でいることは、ヒトでいうといつも筋肉が緊張状態にあります。力で支えているため、見ているだけで力が入り、違和感があります。ヒトは力で支える構造ではなく、螺旋構造、すり鉢構造で、重力を利用して、五重塔のように自動的に慣性平衡系で、意識することなくバランスをとっています。あの阪神淡路大震災のときも、コンクリートのビルは倒壊しても木造の五重塔はひとつも倒れませんでした。力で支えることは体にとっても効率が悪く、とても負担のかかることです。

重心動揺計で測ると、筋肉骨格の発達した大人の男性では重心のゆれは少なく、子供さんや、女性では揺れが大きく出ます。目を開けているときは揺れは小さく、目を閉じると、揺れは大きくなります。目を開けているときは周りの景色により、ゆれを制御していますが、目を閉じてしまうと制御できません。目を閉じるとこんなにも揺れているのかと皆さん驚かれます。歯並びが狭い方、はまり込んだ噛み合わせをしている人、アゴがずれている人、いつも歯をかみ合わせている癖のある人では、目を閉じると揺れが大きく出ます。周りの景色を見て、筋肉で一生懸命に支えていたからです。噛み合わせが安定してくると、動揺も小さくなるのが普通です。アゴが体のバランスをとっているからです。それは体を前に傾けると前歯が当たり、体を後傾させると奥歯があたることからもわかります。アゴは自動的に体のバランスをとっています。

本来バランスは自動制御の中にあり、筋肉で行うものではありません。それを常に筋肉で行わなければならないことは体にとってはとても負担なことであり、人が生きていくうえで余裕がなくなることになり、落ち着いた思考ができないことに繋がります。ここにも噛み合わせの役割があります。